2020 Fiscal Year Annual Research Report
Large-scale empirical tests for (co)evolutionary ecosystem restoration
Project/Area Number |
19H02974
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内海 俊介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10642019)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 浩明 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (30643548)
吉田 俊也 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60312401)
小林 真 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60719798)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 生態ー進化フィードバック / 森林再生 / 遺伝的多様性 / GBS / 生物多様性ー生態系機能 / シカ食害 / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
生態系復元において、生物多様性と生態系機能の関係を考慮することが不可欠である。これまで、種多様性が一次生産や分解速度などの生態系機能に正の効果を与えることが示されてきたが、先行研究の大部分は種多様性に焦点を当てており、遺伝的多様性の効果についての知見は限定的である。しかも、遺伝的多様性の効果の研究では、1種のみ、かつクローンタイプ数を操作することによってのみ検証されており、普遍的な理解にはほど遠い。そこで、生態系機能に対する種多様性効果と遺伝的多様性効果を包括的に検証することを目的として研究を行った。昨年度開始した種多様性操作実験に次世代シーケンシングによるPool-GBSを組み合わせ、遺伝的多様性を全種について定量化した。 Pool-GBSは、複数個体のDNAを1サンプルにプールしてシーケンスを行うことである。サンプリングバイアスを回避し、集団の対立遺伝子頻度の正確な推定ができると期待される。しかしPool-GBSは、非モデル種でまだ広く活用されておらず、この手法による遺伝情報の再現性について検証が必要であり、これも合わせて行った。その結果、高い確度でアリル頻度を評価できることが分かった。 生態系機能については、種多様性と遺伝的多様性の両方が増加すると、一次生産性が向上し、大型哺乳類に対する抵抗性が増加することが分かった。また、遺伝的多様性の種間平均が増加すると、一次生産に対する種多様性効果の相補性効果が高まることが分かった。さらに、遺伝的多様性の種間分散が、多様性効果に対して正から負までの有意な影響を与えた。これらは、種多様性効果は、構成種の遺伝的多様性によって大きく左右されることを示している。 その他、森林再生の現場における陸域昆虫群集について環境DNAによる調査を行った。また、野外における植物・共生細菌・植食性昆虫の進化動態や遺伝構造について機能遺伝子やSNPの解析により明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も、計画通りに進行している。大規模操作実験の試験地の造成が計画通りに進行し、一部での植栽実験が開始できた。また、次年度の実験に向けた野外からの4樹種の種子の採取も完了している。 そして、実績の概要に示したように、ゲノミクス・アプローチも含めて重要な成果が得られつつあるため、本研究課題の進捗はきわめて順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は以下のように推進する。 1)先行して開始していた森林再生実験に加えて、いよいよ本実験である大規模な野外実験が本番を迎える。まず5月末頃に、種多様性と遺伝的多様性のレベルを操作した形で4樹種の播種を行う。その後、植物の種多様性と遺伝的多様性が、生態系機能と植物集団の遺伝構造の変化にどのように影響を及ぼしていくかを調べていく。さらに、その過程が、上位栄養段階の昆虫種に与える生態学的・進化学的インパクトについても明らかにする研究を行う。具体的には、発芽後に、経時的にDNAを収集し、Pool-GBSによるゲノム解析を進める。また、新たに定着する昆虫群集の調査を進め、機能形質分布の評価を行うとともに、対象種を絞りつつDNAを収集する。昆虫種についてもゲノム解析を進め、遺伝的多様性や遺伝構成の評価を行う。 2)昆虫群集に対する環境DNAを活用したメタバーコーディングをさらに展開し、その精度を検証する。 3)これまでに得られている成果に関する論文執筆と投稿をおこなう。
|