2019 Fiscal Year Annual Research Report
稲作の衰退が生物多様性を減少させる:落水後のため池に特有な植物群の現状とその保全
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19H02975
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米倉 浩司 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 植物研究室, 研究員(専門) (00302084) [Withdrawn]
赤井 賢成 鹿児島大学, 国際島嶼教育研究センター, 特任准教授 (00576647)
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 准教授 (40228945)
山城 考 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (50380126)
藤井 俊夫 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80301810)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 在来種保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
稲作の発達によって新たに成立した水田とその周辺環境の生物多様性は,耕作地に依存する多様性として,その重要性が認知されるようになってきている.しかし,近年の水稲栽培の衰退に伴い,水田と関係する生物多様性は滅失の危機に直面している.本研究では,水稲栽培ときわめて結びつきの強い「潅漑ため池」に特異的に見られる植物群を研究対象とする.潅漑ため池は水田への水供給のために季節的な水位変動が顕著で,この季節変動に適応することで水稲耕作とともに繁栄したと推定される植物群が存在するが,これまで生物学的には全くといって良いほど着目されてこなかった.本研究は,潅漑ため池に特異な植物群の生物学的実態(分類学的実態や生態的特性,遺伝的多様性の地理的分化)を明らかにすることによって,これらの植物の保全を行うための手法に関する基礎的な研究を行うことを目指す. 2019年度は,東北地方から九州までの各地のため池を落水期に調査し,ため池に固有に生育すると考えられる種を複数サンプリングした.本年度は特にクロテンツキに着目し,形態的形質の精査および分子系統学的解析を行った.ため池に見られるクロテンツキ類似植物は,クロテンツキとは形態的・遺伝的に分化しており,近年ノジテンツキとして復権させられた種であることが判明した.ノジテンツキには,地理的な遺伝的変異が見られ,隠蔽種を含む可能性が示唆された.さらに,サワトウガラシについても,ため池型は水田型と形態的に違いが生じていることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査は,短期間に広範囲の多数地点を対象として行うことができた.分子実験についても,初年度としては順調に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
ため池に固有な植物群は,2019年度に解析を進めた種以外にも存在する可能性が高いため,引き続き,野外調査を行い,解析対象種を増やす予定である.追加した対象種についても,形態学的解析ならびに分子系統学的・分子集団遺伝学的研究を進めたい. 2019年度に解析を開始した2種については,今年度にさらに詳細な解析を行い,公表準備を進める予定である.
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