2020 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of cancer-specific apoptosis induction targeting ERK hyperactivation
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19H03376
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
杉浦 麗子 近畿大学, 薬学部, 教授 (90294206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 元三 近畿大学, 薬学部, 教授 (40217104)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ERK MAPK / 細胞死 / 抗がん剤 / ACA-28 / DUSP / リン酸化プロテオミクス / 構造活性相関 / がん遺伝子中毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ERKシグナル伝達経路の過剰な活性化の阻害を狙いとした従来の抗がん剤開発に対して逆転の発想で挑み、「過剰なERKの活性化をがん細胞特異的に亢進させることにより、細胞死を誘導する抗腫瘍剤・抗転移剤“ACA-28”の分子標的と作用機構を解明すること」である。令和2年度は1)ACA-28の育成と実用化(構造活性相関研究・適応拡大)ならびに2)ERK依存的細胞死の分子機構解明 (リン酸化プロテオミクス/ERK抑制因子DUSP解析)を中心に取り組んだ。構造活性相関研究の結果、オリジナル化合物であるACA-28のがん細胞増殖阻害に対する有効性とがん細胞に対する選択性を二倍程度高めたリード化合物であるACAGT-007の合成に成功した。適応拡大に関しては、ERK活性化乳がん細胞、大腸がん細胞など複数の癌腫に対する有効性を確認している。また、ACA-28がERKを活性化するメカニズムとして、ERKの脱リン酸化酵素であるDual-specificity phosphatase (DUSP)に焦点をあてた解析を行った。興味深いことに、ACA-28はERK活性化がんモデル細胞であるHER2/ErbB2過剰発現細胞選択的にDUSP6のタンパク質量をプロテアソーム依存的に分解し、細胞死を誘導することが明らかになった。さらにDSUP6のノックダウンはERK活性化細胞選択的に細胞増殖抑制と細胞死を誘導することを明らかにした。このことは、ERK活性化がん細胞においてはDUSP6が高発現し、がん細胞がDUSP6に対する「Oncogene addiction:がん遺伝子中毒」の状態になっていること、DUSP6を標的とした新たながん治療の可能性を示唆する。さらに、リン酸化プロテオミクスの手法により、ACA-28依存的にリン酸化レベルが亢進する因子を複数同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画にのっとり、構造活性相関研究に着手し、酵母を用いたケミカルジェネティクス、ERK活性化がん細胞と正常細胞を用いた細胞増殖抑制効果、がん細胞選択性の評価により、オリジナル化合物をはるかに上回る有効性と選択性を有する化合物の創製に成功した。さらに、ACA-28が細胞死を引き起こすメカニズムに迫るために、ERKを脱リン酸化することにより抑制するDUSPに焦点をあてた解析を行い、ERK活性化細胞選択的にACA-28がDUSP6の分解を介して細胞死を誘導する結果を得た。これらの結果は「がん細胞選択的にERK依存的細胞死」を誘導するメカニズムの一端を明らかにした。加えて「がん抑制因子」と考えられていたDUSPがERK活性化がん細胞においては増殖に必須であることを利用し、DUSPのダウンレギュレーションによる「ERK活性化がん選択的な治療法」につながる成果である。また、ACA-28依存的な遺伝子発現プロファイルの解析、ならびにACA-28依存的なリン酸化プロテオミクスも順調に進展し、ACA-28を介する遺伝子発現の鍵を握る転写因子、ならびにACA-28依存的な細胞死誘導に関わる因子群の同定にも成功している。さらに、ACA-28の標的因子の同定を目的としたACA-28標識化合物の合成にも成功しており、結合タンパク質の解析を進めている。以上の結果から極めて順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
下記に示す三つの課題を中心にさらに研究を展開する。 ①ACA-28の育成と実用化(構造活性相関研究・適応拡大・in vivoマウス実験) 既に得られたリード化合物であるACAGT-007の活性をさらに高めるとともに、悪性黒色腫以外の癌腫に対する有効性の検証を行う。既にERK活性化乳がん細胞や骨肉腫細胞、膵臓がん細胞などで解析を開始している。 ②ACA-28の標的同定を目的としたケミカルゲノミクスの推進とACA-28標識化合物プルダウン法を用いた標的因子の同定を質量分析の手法で行う。さらに、これらのACA-28結合因子の中から、ACA-28依存的な細胞死に関わる因子の絞り込みを行う。具体的には結合因子をノックダウンした細胞を作成し、ACA-28依存的な細胞死誘導における標的因子の影響を解析することにより、ターゲット・バリデーションを行う。 ③ERK依存的細胞死の分子機構解明を目的としてリン酸化プロテオミクスの解析とターゲットバリデーションを行う。既に候補因子として複数のタンパク質を同定しており、今後これらの因子を欠損させた細胞を作成し、ACA-28依存的な細胞死誘導に対する影響を解析する。
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Research Products
(35 results)