2020 Fiscal Year Annual Research Report
エキソソームを介した筋萎縮発症機序の解明と新たな治療へのアプローチ
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19H03516
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
金山 博臣 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10214446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布川 朋也 徳島大学, 病院, 講師 (70564342)
尾崎 啓介 徳島大学, 病院, 医員 (30814157)
津田 惠 徳島大学, 病院, 助教 (30769188)
二川 健 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (20263824)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エキソソーム / がん悪液質 / 筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん悪液質はがん治療に対する抵抗性、有害事象の発生に関与し、治療成績向上の大きな障害となっている。研究代表者らはヒト由来細胞を用いたがん悪液質モデルを用いて新たな治療法の開発を目指している。同モデルを用いてがん細胞由来エクソソームの投与により筋萎縮が認められることが明らかになっている。この背景にある機序を明らかにするためにがん細胞由来エクソソームに含まれるmiRNAの網羅的解析と、筋細胞にがん細胞由来エクソソームを投与した際の遺伝子発現解析を施行した。これらの結果を統合し、がん細胞由来エクソソームに含まれるmiRNAの中から、筋細胞の細胞増殖および筋細胞内の代謝変化を誘導しうる標的候補miRNAを同定した。この分子の機能解析を行うために、エクソソームを投与した際の同定した候補miRNAの標的分子の変動をウエスタンブロッティングにより確認した。さらにこのmiRNAに対するinhibitor(RNA)を使用することにより、これらの標的分子の変動が、がん細胞由来エクソソーム内に含まれるmiRNAによるものであることの検証を行っている。また、エクソソーム投与による筋細胞の表現型の変化についても評価しており、標的候補のmiRNAのinhibitor投与によりこの表現型の変化がレスキューされることを確認した。 さらに、がん細胞由来エクソソーム投与後の代謝変化についてCE/MS, LC/MSを用いて評価している。この結果、クエン酸回路に関連する分子や脂質代謝の中間物質の濃度変化を認めており、このことは本研究が治療標的として検討している項目である、がん細胞由来エクソソームの筋細胞内の代謝に与える影響があることを意味している。現在、候補miRNAと筋細胞内代謝変化の関連について検討をおこなっており、今後エクソソームによる筋細胞の代謝変化に着目した治療法の開発を目指しさらなる研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①がん細胞由来エクソソームの抽出および含有される分子の解析については終了している。 ②筋細胞への影響について、遺伝子発現解析、代謝に関する解析(CE/MS,LC/MS)を施行している。これらの解析の統合を行っており、筋萎縮を引き起こしうる新たな分子として候補miRNAの同定を終了している。 ③候補miRNAの機能解析をin vitro実験で実施しており、検証が進んでいる。 ④miRNAの標的分子を介した筋細胞内代謝変化についての解析も開始している。 上記のとおり予定通り研究が進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
がん由来エクソソームによる筋細胞内代謝変化を明らかにし、がん悪液質に伴う筋萎縮における新たな治験に基づいた治療法の開発を目指す。 ①同定されている候補miRNAのinhibitor およびmimic RNAによる代謝変化を確認し、現在同定されている代謝変化と候補miRNAの関連について明らかにする。 ②①の結果から明らかになったmiRNA標的分子の機能解析とこの分子を治療標的とした薬物治療の効果について検証を行う。具体的には、標的候補分子となった分子の阻害剤、賦活剤等を用いた際の筋萎縮改善効果を明らかにするとともに、その際の細胞内代謝変化についてCE/MS、LC/MSを用いて評価し、悪液質誘導因子により引き起こされた有害な代謝変化を改善することによる治療の効果について検証を行う。さらに、これらの代謝改善が、従来より悪液質における筋萎縮誘発の主因とされているプロテアソーム、オートファジー、アポトーシス等に与える影響についても評価を行う。 ③Xenograftモデルを用いてがん悪液質に対する薬物療法の筋萎縮改善効果について検証を行う。薬剤使用により筋組織内の標的分子の機能変化が筋萎縮に与える影介響についてその下流分子や細胞内代謝変化を遺伝子発現解析、Western blotting、CE/MS、LC/MSを用いた代謝産物の変化を評価することで明らかにする。 ④候補薬ががん細胞の増殖、浸潤能やがん細胞内細胞内代謝に与える影響についても評価を行うことで筋萎縮のみならずがん細胞に対する治療効果の増強につながる可能性についても明らかにする。
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Research Products
(8 results)