2021 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding the neural mechanisms of effects of early life environments on brain and behavior by using new behavioral analysis system
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19H03539
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
西 真弓 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40295639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧之段 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00510182)
遠藤 のぞみ 奈良県立医科大学, 医学部, 研究助教 (90802819)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会集団での行動解析 / ストレス / 幼児虐待 / Hikikomori / 化学遺伝学 / マウス / AR-LABO |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、虐待やHikikomoriなど劣悪な生育環境は、成人が患う多くの精神疾患において最 高レベルの危険因子の一つであると言われおり、適切かつケアの確立は喫緊の研究課題である。これまで様々な動物モデルを用いた基礎研究が展開されてきたが、生育環境が社会的集団生活における行動、つまり普段の行動にどのような影響を与えのるかについては未だ明らかにされていない。本研究の目的は、虐待やHikikomoriのモデル動物を用い、研究代表者らが近年開発した社会的集団における長期間の定量的行動解析が可能な新システムAR-LABO (Augmented Reality-based Long-term Animal Behavior Observing system)と、脳領域特異的に神経活動の制御が可能な化学遺伝学を用い、「幼少期生育環境」‐「社会的集団での行動表現型」‐「責任脳領域」の関係を明らかにし、被虐待やHikikomoriの神経基盤の理解を目指すことである。そのために本研究においては、<1>AR-LABOによる母子分離/思春期社会的隔離モデルマウスの社会的集団における行動学的特徴の同定;<2>母子分離/思春期社会的隔離モデルマウスの行動を制御する神経活動の操作と神経回路の同定;<3>ケア/治療法の開発の3課題を遂行する。2020年度は集団内の行動をより詳細にかつより大量に解析するため、AI技術によりAR-LABOの改良および社会行動解析の自動化を行った。母子分離マウスの行動についてAR-LABOを用いて4日間解析した。その結果、母子分離マウスは社会集団において、同じケージ内の他マウスに対する社会的近接性が対照群に比して有意に低下していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)2021年度は、前年度に引き続きAR-LABOの行動解析システムの改良を試みた。 i)開発協力者の業者と奈良先端大学との共同研究により、集団内の行動をより詳細にかつより大量に解析するため、AI技術によりAR-LABOの改良および社会行動解析の自動化を行った。まず、AR-LABOではデータの欠損が生じていたため、AI動物トラッキングのデファクトスタンダードであるDeepLabCutを利用して補間を行った。その結果、欠損値は約8割減少した。次にAR-LABOでは外れ値が混入することがあったため、拡張カルマンフィルタによる補正を行った。その結果、欠損率は2.4%まで減少した。さらに、長時間ビデオの社会行動解析を可能とするため、行動の自動判定技術を開発した。先行研究では社会性行動を25種類に分類していたが、本研究ではまず動的行動を含まない9種類について、トラッキングデータから自動的に判定するシステムを構築した。それにより,社会行動の個体間差を客観的に比較できるようになった。 ii)上記のように改良されたAR-LABOを用い、母子分離マウスの集団飼育下における行動解析をマウスの数を増やして行った。その結果、母子分離マウスは集団飼育環境において社会的近接性が低下した(他マウスに接近しない)。また、MS2匹とコントロール2匹を混合して集団飼育すると、 MSマウスはコントロール群に比して同一ケージ内の同胞マウスに対する距離感や他のマウスに対するアプローチ行動の異常を確認することができた。 2) 化学遺伝学 (DREADD)の準備を行った。Camk2a- Creマウス(RBRC00153)を理研バイオリソースセンターより購入し、奈良医大の動物実験室へ導入する手続きが完了した。アデノ随伴ウイルスベクターAAV- hSyn-FLEX-hM3Dq-mCherryまたはAAV-hSyn-FLEX-hM4Di-mCherryを研究協力者の名古屋大学・中山章弘教授から供与していただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、AR-LABOの解析方法についてさらに改良を加え、同居マウスどうしの鼻先と鼻先の距離の関係、頭の角度、追いかける/追いかけられる行動、動きのスピード等についても定量解析できるようにし、より詳細に社会性、社会的順位(ヒエラルキー)等について考察できるようにする。また、理研バイオリソースセンターより購入したCamk2a- Creマウス(RBRC00153)を用い、アデノ随伴ウイルスベクターAAV- hSyn-FLEX-hM3Dq-mCherryまたはAAV-hSyn-FLEX-hM4Di-mCherryを母子分離マウスの海馬および扁桃体基底外側部へのマイクロインジェクションを試みる。ついで、CNOを投与して行動の変容についてAR-LABOを用いて解析する予定である。さらに、AR-LABOのシステムの一層改良し、Hikikomoriマウスについても同様の実験を進めていく予定である。
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Research Products
(15 results)