2020 Fiscal Year Annual Research Report
侵襲時の補体活性化からみた多臓器不全の病態解明に関する研究
Project/Area Number |
19H03764
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
田中 裕 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90252676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩渕 和久 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (10184897)
中村 有紀 順天堂大学, 医学部, 助手 (30621891)
岡本 健 順天堂大学, 医学部, 教授 (40347076)
平野 洋平 順天堂大学, 医学部, 助教 (70621895)
石原 唯史 順天堂大学, 医学部, 助教 (70648295)
近藤 豊 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90642091)
末吉 孝一郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90648297)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 補体活性化 / 多臓器不全 / 凝固障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
重度外傷や熱傷、敗血症、熱中症などの病態で生じる多臓器不全は、大きな侵襲や重篤な感染症が契機となることが多く、治療に難渋しその死亡率も未だ高い。このような生体侵襲時には補体活性化が生じ、血栓性微小血管症(Thrombotic microangiopathy: TMA)が引き起こされる。TMAは全身臓器の微小血管の血栓形成と、血管内皮細胞障害を呈する。しかし、生体侵襲時の補体活性化による多臓器不全の機序については未だ明らかでない。これは補体活性化の定量評価が困難であったことや、補体活性化機序が様々な因子により修飾されるためと考えられる。 本研究の目的は、侵襲時の多臓器不全の病態を補体活性化によるTMAという新たなる視点から解明することである。臨床・基礎研究で侵襲時における、(1)補体活性の定量評価、(2)TMAとの関連について、(3)補体活性化と白血球・血小板連関について、(4)補体活性の制御による多臓器不全抑制の検討を行う。多臓器不全時の補体活性化を制御することで同病態による救命率の改善を狙う。 本年度の成果としては、1)侵襲時の補体活性の定量評価では、熱中症や重度外傷、敗血症、心肺停止蘇生後に生じる多臓器不全病態における補体活性(C3、C4、CH50、Soluble C5b-9、C3a、C5a、Ba)および補体制御因子(Soluble CD59、Factor Hなど)の定量評価を行った。2)重症度の指標としてAPPACHEⅡ score、臓器障害の指標としてSOFA score、播種性血管内凝固(DIC)の指標として日本救急医学会DICスコアを算出し上記補体因子との相関を評価した。3)凝固障害と補体との関連を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
侵襲時の補体活性の定量評価:重度外傷や熱傷、敗血症、熱中症、心肺停止蘇生後に生じる多臓器不全病態における補体活性(C3、C4、CH50、Soluble C5b-9、C3a、C5a Ba)および補体制御因子(Soluble CD59、Factor H)の測定系の確立と評価を行った。熱中症では来院時Soluble C5b-9、C5a Ba、Soluble CD59は健常人に比べ有意に上昇していたがFactor Hの上昇は認められなかった。熱中症を重症度により分類すると軽症(1度)では補体因子の活性化は認められなかったのに対し、中等症(2度)ではC3a、C5aおよびBaが有意に上昇していたが、Soluble CD59及びFactor Hの上昇は認められなかった。重症(3度)ではC3a、C5a Soluble CD59およびBaが有意に上昇していたがFactor Hの上昇は認められなかった。またSoluble CD59はAPACHEⅡscore、SOFA score、DIC scoreおよび重症度と正の相関を認めた。さらにSoluble CD59はプロトロンビン時間およびフィブリノーゲン値と正の相関を認めた。 重症COVID-19感染症患者では血栓症が発症することが報告されている。本血栓症発症に補体の活性化が関与しているどうかを明らかにする目的で、本年度は同感染症患者の補体活性の測定にも着手した。しかし、検体測定に当たりコロナウイルスの除去の必要性について検討する必要が出てきた。現段階では測定に際しての安全性が確保できていないため、ウイルス除去による補体活性への影響や、ウイルス除去後の安全性の結果等が明らかになり次第測定を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床ならびに基礎研究を通して以下の点を明らかにする。 1)侵襲時の補体活性の定量評価、2)TMAとの関連についての検討、3)補体活性化と白血球表面補体受容体の関連について、4)補体活性の制御による多臓器不全抑制の検討、5)多臓器不全時の補体活性化の解明に関する研究、6)補体活性化に影響する遺伝子変異と機能解析 1)侵襲時の補体活性の定量評価:引き続き重度外傷や熱傷、敗血症、心肺停止蘇生後に生じる多臓器不全病態における補体活性(C3、C4、CH50、sC5b-9、C5a、Baなど)と補体制御因子(CFH,sCD59など)の定量化を行う。2)侵襲時の TMA 病態との関連についての検討:引き続きTMA 病態(破砕赤血球、血小板減少、血栓による臓器機能障害)の定量評価を行う。3)補体活性化と白血球表面補体受容体連関について:フローサイトメトリを用いて好中球やT細胞表面のC3aR、C5aR、CD59、CD55およびCD46の発現量を定量評価する。 4)薬物や血液浄化による補体活性化改善効果の検討:臨床で用いられている抗炎症薬やエラスターゼ阻害剤やトロンボモデユリンなどの薬物投与による、補体活性化の制御効果について検討する。5)多臓器不全時の補体活性化の解明に関する研究:動物実験により、侵襲時の補体活性を定量評価し、補体活性抑制効果のある薬物投与による治療制御の効果を検証する。 代表者の田中は研究立案、研究全体の総括を行い、臨床研究は田中と近藤、平野、岡本、石原、中村、末吉が分担する。基礎研究は田中と近藤、平野、岡本、岩渕、末吉が分担する。細胞表面補体受容体測定は現有するフローサイトメーターで測定する。補体活性の定量評価および補体制御因子の測定はELISA法や化学発光法などを用い、現有する機器にて測定する。
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Research Products
(10 results)