2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a new Regenerative Medical Treatment using the cerebrum anlage derived from Muse cells in oral mesenchymal tissue
Project/Area Number |
19H03767
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
沖 明典 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60334067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 博 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30089784)
丸島 愛樹 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40722525)
松丸 祐司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70323300)
松村 明 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (90241819)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯髄幹細胞 / 胚子様構造体 / 胚子成長因子(EmbGF) / 神経管 / 中脳原基 / 神経系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
各種器官臓器の機能不全を再生医療による移植治療法で治療する方法を開発することを目的に、まず各種の器官・臓器の原基を得るための細胞源として組織幹細胞のうちから万能細胞の存在が示唆される歯髄幹細胞に着目しこれを細胞源として使用した。ヒトの歯髄初代培養細胞から薄撒き法で歯髄幹細胞を得た。この幹細胞から天蓋培養法で胚盤胞に似た胚様体を作製した。この胚様体を我々が開発した胚子成長因子(EmbGF)を添加した培養液で還流培養し、心拍動を認める胚子様構造体の成育に成功した。 胚子様構造体内に確認された各種の器官・臓器の原基として、中枢神経原基である神経管、脈絡叢、網膜、呼吸器原基、消化管原基(培養により膵臓原基が発生する)、肝臓(造血組織内在)、腎臓(中腎)、皮膚(毛嚢を含む)、歯胚等が存在した。原基のうち大きな領域に出現する中枢神経原基である神経管を実態顕微鏡下に採取した。この神経管を神経成長因子(NGF)添加培養液で還流培養すると神経管は成長肥大しメラニン含有細胞を含む中脳が出現した。中脳原基の付近に芽出する部分は特殊な形の大型細胞が存在することから小脳であろうと思われた。神経管内側には小型球形細胞が存在する。この細胞を採取しsingle cell cloning することにより、この細胞は神経細胞とグリア細胞の幹細胞であることが判明した。次に神経管を神経維持培地で分散培養すると、希突起膠細胞、星状膠細胞、神経細胞が増殖した。神経管に接して存在する脈絡叢原基から上皮細胞を分離し培養することに成功した。神経管は低酸素状態に抵抗性の高いことが判明したことから、脳梗塞巣への移植の可能性が示唆された。低酸素状態に対する抵抗性は、細胞内小器官(オルガネラ)の発育が乏しいことに起因すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト歯髄初代培養細胞から薄撒き法により歯髄幹細胞を得た。得られた歯髄幹細胞を天蓋培養し胚様体を作製した。この胚葉体を我々が新たに作製した胚子成長因子(EmbGF)添加培養液で還流培養し、心拍動を認める胚子様構造体の成育に成功した。新たに作製したEmbGFにより胚子様構造体作製率を飛躍的に向させる事ができた。(EmbGFならびに各種器官・臓器採取に関しては、「器官原基含有移植材料を製造する方法」で特許準備中) (1)胚子様構造体から実態顕微鏡下に採取した神経管を神経成長因子(NGF)を含む神経管成長培養液(開発中)で還流培養すると神経管は成長肥大しメラニン含有細胞を含む中脳が出現した。中脳を分離しその構成細胞を増殖させることに成功した。(2)中脳原基の付近に芽出する部分は特殊な形の大型細胞が存在することから小脳であろうと推定された。(3)神経管構成細胞はほぼ球形の細胞で、管腔の内側部に特に分裂像が多く観察された。神経管の内側には極めて小型の球形細胞が存在する。この細胞を採取しsingle cell cloning すると、この細胞は神経細胞とグリア細胞の幹細胞であることが判明した。(4)神経管から消化酵素液で構成細胞を解離し、神経維持培地で分散培養すると、神経細胞(小型球形細胞、単極神経細胞、疑単極神経細胞、双極神経細胞、多極神経細胞)、希突起膠細胞、星状膠細胞が確認された。(5)神経管に接して存在する脈絡叢原基から上皮細胞を分離培養することに成功した。(6)神経系細胞を低酸素培養すると小型球形細胞や単極神経細胞、双極神経細胞が増殖することが判明した。(7)神経幹細胞(小型球形細胞)は低酸素状態に抵抗性の高いことが判明した。(8)神経管と比較研究する目的で、歯髄細胞から神経系細胞を短時間に分化誘導する新規法を開発した。(特願2019-91625)
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Strategy for Future Research Activity |
(1)神経管を効率よく肥大成長させるための神経管成長培養液の作製 (2)中脳構成細胞をパーキンソンモデル動物に移植し評価する。すでに我々は歯髄より分化誘導させた神経系細胞をパーキンソンモデルラットに移植し、パーキンソン症状の改善に成功している(Takahashi H.et al.,Human Cell 2017)(3)中脳原基の付近に芽出する部分に存在する大型細胞がプルキンユ細胞であることを免染法で証明する。この大型細胞を密度勾配遠心法で分離し、細胞の性質を検討する。(4)また中脳原基の付近に芽出する部分には小脳を構成する細胞がワンセット存在するはずなので、これを小脳疾患モデル動物へ移植し評価する。(5)神経管を神経維持培地で分散培養し、我々が開発した方法(特開)で希突起膠細胞を分離し、脊損モデル動物に移植し機能回復を評価する(整形外科との共同研究予定)。(6)神経管内側に存在する小型球形細胞を脳梗塞モデル動物の梗塞巣に移植し機能回復をシリンダーテスト等で評価する。(7)小型球形細胞(神経系幹細胞)をヌードラットの中枢神経各部位(視床下部、中脳、小脳等)に移植し、ホストの環境に合わせてどのような神経細胞が分化するかを免染等で明らかにする。(8)神経管に接して存在する脈絡叢原基から上皮細胞を分離し培養することに成功したので、この細胞の特性を明らかにする。将来、血液・脳脊髄液関門の研究のためのモデルシステムを開発する。(9)神経管と比較研究する目的で、歯髄細胞から神経系細胞を短時間に分化誘導する新規法を開発した。(特許準備中)。(10)新規法で分化誘導した神経系細胞と小膠細胞(マイクログリア)が存在する神経管由来神経系細胞を比較し、多発性硬化症の研究を行いたい。
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