2021 Fiscal Year Annual Research Report
進行膵癌に対するがん化学療法の費用対効果に関する検討
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19H03874
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
赤沢 学 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80565135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 敏克 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 薬剤部長 (20505408)
成松 宏人 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 部長 (50524419)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 転移性膵癌 / 一次化学療法 / 費用対効果分析 / QOL値 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行膵がんにおけるQOL及び費用を加味した治療レジメン(化学療法)の費用効果分析を実施するために必要なデータとして、2022年度は、切除不能膵がんの疾患シナリオを開発し、一般人を対象に切除不能膵がんの疾患シナリオを用いたQOL調査(疾患シナリオの年数を0-100の物差しで評価するVisual analog scale:VAS並びに疾患シナリオと生存年数の組み合わせた2つのケースを比較するComposite time trade off:cTTO)を実施した(回答者220名)。また、同様のQOL調査をがん専門病院で働く医師に対しても実施して、一般人対象の調査結果と比較を行った(回答者20名)。膵がん患者の健康状態としては、治療継続中の状態(SD)並びに副作用として発熱性好中球減少症、好中球減少症、下痢、悪心・嘔吐、末梢神経障害が発現した状態、膵がんが増悪した状態(PD)の11個の健康状態について調査した。一般人が回答した健康状態ごとのQOL値の平均値(cTTO)は「SD + 副作用無し」が 0.634、「SD + 好中球減少症 G1/2」が 0.649と最も高かった。一方、「PD」では-0.119と死よりも低いマイナスの値を示した。医師の回答は全体的に一般人よりも高いQOL値を示した。また、「PD」ではマイナスの値にはならず、膵がん患者の実態をよく知る医師の回答のほうがより妥当性が高いと考えられた。これらの調査結果に加え、臨床試験で報告された副作用の発生割合並びに継続日数を勘案して、最終的に費用対効果分析に使用する健康状態別のQOL値並びに副作用が発現した場合のQOL値の減弱を計算した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切除不能膵がんは先進国で最も死亡率の高い癌腫の1つであり、幾つかの全身化学療法における治療選択肢が存在するものの、その生存率は低く、治療の主たる目的は延命及びQuality of life(QOL)の向上とされている。膵がん診療ガイドライン 2019では、切除不能膵がんに対する全身化学療法の一次療法として、有効性が最も高いものの毒性が強いFOLFIRINOX療法 (5-FU+レボホリナート+イリノテカン+オキサリプラチン:FFX)及びゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法(GnP)が推奨される。全身状態や年齢等から、一次療法の実施が不可能な患者に対しては、安全性の面で優れるゲムシタビン単独療法(GEM)、S-1単独療法(テガフール+ギメラシル+オテラシル:S-1)もしくはゲムシタビン+エルロチニブ併用療法(GEM+ERLO)が推奨される。これらの推奨の根拠は、各治療レジメンの有効性及び安全性に基づく考え方である。実臨床における一次療法は、必ずしも有効性の優位性でFFXやGnPが選択されているわけでは無く、安価かつ安全性の高いGEMやS-1等の選択も少なくない。本研究では、実臨床の治療選択に役立つ情報提供を目的に、有効性及び安全性だけでなく、患者のQOLに与える定量的な影響及び経済性への影響を包括的に評価するため、①ネットワークメタアナリシス(NMA)による有効性比較、②QOL値及び費用の推計、③それらを包括的にまとめた費用効果分析を実施している。2021年度までには①の有効性比較の結果をまとめて国際雑誌にて報告済みである。2022年度は②のうち、一般人を対象にしたQOLの調査結果は既に論文にまとめて国際雑誌に受理された。さらに、医師の調査結果については、一般人の調査結果との比較を加えて論文にまとめ、国際雑誌の査読を受けている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までに検討が終わった有効性や安全性の比較並びにQOL調査によって計算された健康状態毎のQOL値に加え、別途行った切除不能膵がんにおける全身化学療法の医療費推計研究の結果を合算して、現在、切除不能膵がんにおける一次化学療法の費用効果分析を実施中である。2023年度中には論文にまとめて国際雑誌に投稿する準備を進めている。
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