2019 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of an environmental suitability diagnosis method for urban trees: Introduction of stomatal response assessment using aquaporins
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19H04281
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
富田 祐子 (半場祐子) 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (90314666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 啓一 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (20238223)
久米 篤 九州大学, 農学研究院, 教授 (20325492)
奈良 久美 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (30322663)
北島 佐紀人 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (70283653)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 塩ストレス / 気孔コンダクタンス / 光合成 / 大気汚染 / アクアポリン / 水透過活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)都市樹木の光合成・気孔応答調査 都市樹木に対する都市環境ストレスとして「大気汚染」に着目し、主要な都市樹木の樹種について最も多く植栽されている低木のヒラドツツジを選定し、大気汚染レベルが異なる11カ所の調査地で、2019年7月~11月にかけて光合成能力および気孔応答の実地調査を行った。光合成速度、気孔応答いずれも、交通量との相関は明瞭ではなかった。また、長期の気孔応答を反映する指標である炭素安定同位体比についても、交通量との明瞭な相関は認められなかった。一方、ヒラドツツジの葉の裏面を観察したところ、排気ガス由来の粉塵である可能性が高い、黒色の粒子が多数付着していることが分かった。この物質がヒラドツツジの光合成にどのように影響するかは不明である。 (2)ストレス負荷実験による気孔応答調査 都市におけるストレスの一つとして、近年大型化している台風の襲来による塩害に着目し、塩ストレス負荷実験を行って気孔応答を調査した。街路樹としてよく用いられているツバキ、ヒラドツツジ、マルバシャリンバイ、イチョウの4種で比較を行ったところ、マルバシャリンバイが比較的高い塩ストレス下でも気孔開度や光合成を維持できており、特に塩ストレスに耐性が高いことが明らかになった。 (3)気孔応答の鍵となる可能性があるアクアポリンの同定 共同研究者である奈良のこれまでの研究により、シロイヌナズナの液胞膜アクアポリンAtTIP2;2が気孔応答に関与している可能性があると予想し、アクアポリンの水透過活性を測定するための測定機器の購入およびセットアップを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で2019年度に実施する予定であった3種の研究のうち、(1)気孔応答データベース作成のための屋外実測、および(2)ストレス負荷実験については研究を予定通り実施することができた。 (1)の気孔応答データベース実測の研究は、2018年度からの継続である。2019年度は、交通量との関係をより明瞭にするために測定地点を11地点まで増やして、樹木種をヒラドツツジに絞って調査を行った。予想に反して、交通量と気孔応答との明瞭な関係を得ることができなかった。1年に1回のみの測定であったため、測定時の条件のばらつきの影響を受けた可能性がある。 (2)の塩ストレス負荷実験においては、当初の予想以上に、気孔応答に明瞭な樹木種間差が認められた。街路樹選定の際に有用な情報を得ることができたと考えている。 当初計画で実施予定であった(3)シロイヌナズナのアクアポリンの水透過活性測定 については、測定機器の購入及びセットアップまでを行うことができたが、漏水事故の補修に時間を要したため、水透過活性の計測を行うまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)都市樹木の光合成・気孔応答調査 調査対象を高木の3種(イチョウ、ソメイヨシノ、トウカエデ)に変更し、交通量が明確に異なる4か所の調査地を選定して、光合成および気孔応答調査を行い、交通量との関係を明らかにする。 (2)ストレス負荷実験による気孔応答調査 対象樹種を最も塩ストレス耐性が高かったマルバシャリンバイに絞り、ストレスが現れる塩ストレス濃度を明らかにするとともに、光合成速度や気孔応答にどのような生理的メカニズムが関与しているのかを明らかにする。 (3)気孔応答の鍵となる可能性があるアクアポリンの同定 セットアップした測定機器を使用して、シロイヌナズナの液胞膜アクアポリンAtTIP2;2に本当に水透過活性があるのかどうかを実測することで明らかにする。さらに、他に候補となるアクアポリンがないかどうか、文献調査などによって探索を行う。
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