2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study on the Issues of Nuclear Global Disasters from the Viewpoint of Life, Livelihood and Mind
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19H04355
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川野 徳幸 広島大学, 平和センター, 教授 (30304463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 今日子 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00634932)
原田 浩徳 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10314775)
竹峰 誠一郎 明星大学, 人文学部, 教授 (40523725)
星 正治 広島大学, 平和センター, 名誉教授 (50099090)
和泉 志津恵 (大久保志津恵) 滋賀大学, データサイエンス学部, 教授 (70344413)
vanderDoes Luli 広島大学, 平和センター, 准教授 (00839087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 核被害 / 広島・長崎 / セミパラチンスク / チェルノブイリ / マーシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度の研究実績の概要は次の通りである。①2019年8月、セミパラチンスク核実験場近郊のウルジャル地区のウルジャル、ココゼック、クズルトゥ、ジャナイの4村において、住民を対象にアンケート調査・証言収集調査を実施し、95件のアンケートを回収した。現在、従来の回収分も含めてアンケート結果の解析作業を行っている。 ②研究代表者・川野と分担者・星は海外の共同研究者とともに、セミパラチンスク地区住民の線量評価、同地区の健康影響、動物実験による内部被ばく等に関する多くの論文を発表した。一連の研究は、Radiation and Environmental Biophysicsのような著名な雑誌で発表した。 ③2019年9月にウクライナ・キエフへ出張し、チェルノブイリ原発事故被災者へのオーラルヒストリーを実施し、その後、校正を終了した。2018年度に『チェルノブイリ・旧プリピャチ住民へのインタビュー記録(第二報)』を発行したが、第三報発行も今後予定している。 ④分担者・ファンデルドゥースと共同で、朝日新聞・読売新聞実施の被爆実態アンケート調査結果を援用し、被爆体験とトラウマに関する論考を行った。また、両紙のデータベース追加構築も行っている。 その他の分担者も本研究における役割分担を十分に果たし、本研究の深化に寄与した。平林は、カザフスタンの核実験被害援護措置について考察し、原田は放射線ヒバクシャに高頻度に発症する骨髄異形成症候群(MDS)の発症機序、特にその特徴である汎血球減少を生じるメカニズムについて検討した。和泉は一般化線形モデルの枠組みの中で、時間に関して変化する係数のモデルを用いた解析方法を検討し、テキストデータ、量的データおよび質的データに応用し、解析方法の特性を考察した。竹峰はマーシャル諸島を中心に被災者への補償内容を考察した。研究成果については、業績欄に記載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた調査研究は、①セミパラチンスク地区でのアンケート調査・証言収集調査の継続、従来のアンケート結果の解析、②チェルノブイリ原発事故被災者へのインタビュー調査の継続、③マーシャル諸島での聞き取り調査及び援護措置に関する研究、④朝日新聞・読売新聞実施の被爆実態アンケート調査結果を用いた被爆被害研究の4点であった。 何れも当初の計画通り実施できた。①については、未調査地域であったウルジャル地区の4村で実施し、95人を対象にアンケートを実施した。セミパラチンスク地区の被害実態解明研究に関しては、従来、特に傾注して研究を進めてきた。当初の予定を大きく上回り、その成果を発表できた。たとえば、これまで共同研究を進めてきたカザフ放射線医学環境研究所等と共著にて、放射線関連の一流誌であるRadiation and Environmental Biophysicsに論文を掲載した。セミパラチンスク地区住民の健康被害の一端、内部被ばくに関する研究など予定以上に展開することができた。 ②に関しては予定通り、旧プリピャチ住民の互助団体であるゼムリャキの協力を得て、被災者へのインタビューを実施した。インタビュー内容については、帰国後、テープ起こし、校正を終えた。③のマーシャル諸島での調査も予定通り実施できた。④読売・朝日両紙の被爆実態アンケート調査結果を援用し、被爆体験におけるトラウマを考察した。業績に示すように、研究代表者・分担者はそれぞれの役割を十分果たしている。 この意味において、本研究は順調に進んでいた。但し、コロナ禍の影響を受け、2020年3月に予定していたセミパラチンスクでの今後の協議ができなかった。これは2020年度以降の研究に大きな影響を与える可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究計画も①セミパラチンスク地区でのアンケート調査・証言収集調査の継続、②チェルノブイリ原発事故被災者への聞き取り調査、③マーシャル諸島ロンゲラップ島での被災者への聞き取り調査、④朝日新聞・読売新聞実施の被爆実態アンケート調査結果を用いた原爆被爆被害の実態解明の4点である。 しかしながら、今後、コロナ感染拡大の影響を受け、予定している海外調査・国内出張が実施できない可能性もある。その場合は、それらに費やす時間を、従来回収してきたセミパラチンスク地区アンケート回答結果の解析、読売・朝日両紙のアンケート回答結果(証言含む)を用いた被爆実態解明研究の時間に充てる予定である。従来、核被害者の心的影響についても研究してきたが、今後は、今般のコロナ感染拡大による「社会的弱者」の心的影響まで研究対象を広げることも検討したい。 本研究代表者の専門は、原爆被ばく研究及び平和学である。「平和」とは、究極的には、「弱者」、「社会的弱者」のいない社会であるという信念のもと研究を続けてきた。ここでの「弱者」・「社会的弱者」とは、自身の専門の立場からすれば、原爆被爆者、チェルノブイリ原発事故被災者、セミパラチンスク地区住民、フクシマ住民などであった。こういった人たちに思いを馳せることができる、こういった人たちを優先的に考えられる社会が「平和」なる社会、「平和」な状況と確信している。そう考えた時、今般のコロナ禍におけるいわゆる「社会的弱者」の顕在化は、本研究でも対象とすべきではないかと考え始めている。そのため、精神医学を専門とする高知大学井上教授、島根大学橋岡准教授との共同研究を検討し、場合によっては、今後、研究分担者に新たに加え、核被害者及び既述の「社会的弱者」に関する研究体制を強化する。核被害者と同時に、コロナ禍における「社会的弱者」に焦点を当てた研究も少しずつ進めたいと考えている。
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Research Products
(47 results)
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[Journal Article] Effects of Internal Exposure to 56MnO2 Powder on Blood Parameters in Rats2020
Author(s)
Nariaki Fujimoto, Arailym Baurzhan, Nailya Chaizhunusova, Gaukhar Amantayeva, Ynkar Kairkhanova, Dariya Shabdarbaeva, Yersin Zhunussov, Kassym Zhumadilov, Valeriy Stepanenko, Vyacheslav Gnyrya, Almas Azhimkhanov, Alexander Kolbayenkov, Masaharu Hoshi
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Journal Title
The Eurasian Journal of Medicine
Volume: 52
Pages: 52~56
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Preliminary assessment of dose distribution on the spatial micro level for internal exposure of alveolar epithelium of rats by 56Mn2019
Author(s)
V.F. Stepanenko, K.Sh. Zhumadilov, M. Hoshi, Y.T. Zhunussov, S. Endo, M. Ohtaki, K. Otani, N. Fujimoto, K. Shichijo, N. Kawano, A. Sakaguchi, N.Z. Chaizhunusova, D.M. Shabdarbaeva, A. Baurzhan, V.S. Gnyrya, A.S. Аzimkhanov, A.D. Kaprin, S.A. Ivanov, E. Yaskova, I. Belukha, T. Kolyzhenkov, A.D. Petukhov, V. Bogacheva
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Journal Title
Bulletin of the Karaganda University. "Physics" Series
Volume: 95
Pages: 59~63
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] A proposal of 4 criteria for future collaborative research between Kazakhsta and Japan: Focusing on Semey, Koch, Hiroshima and Nagasaki2019
Author(s)
Ken Inoue, Nailya Zh. Chaizhunussova, Yoshihiro Noso, Nobuo Takeichi, Sadayuki Hashioka, Haruo Takeshita, Yasuyuki Fujita, Madina М. Apbassova, Dariya М. Shabdarbayeva, Gulnar А. Berekenova, Masaharu Hoshi, Shotai Kobayashi, Yersin T. Zhunussov
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Journal Title
Science & Healthcare
Volume: 21
Pages: 106-112
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Book] 基礎講義 生物学2020
Author(s)
井上 英史、都筑 幹夫、原田浩徳ほか編著
Total Pages
240
Publisher
東京化学同人
ISBN
9784807909728
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[Book] 文化情報学事典2019
Author(s)
村上征勝、金明哲、小木曽智信、和泉志津恵ほか編著
Total Pages
850
Publisher
勉誠出版
ISBN
4585200711
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