2019 Fiscal Year Annual Research Report
計量テキスト分析を用いた現代中東における新たな政治的動員に関する実証研究
| Project/Area Number |
19H04374
|
|---|
| Research Institution | Ritsumeikan University |
|---|
Principal Investigator |
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山尾 大 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (80598706)
千葉 悠志 公立小松大学, 国際文化交流学部, 准教授 (70748201)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 地域研究 / 社会科学 / 計量テキスト分析 / 紛争 / 権威主義 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、(a)シリア、レバノン、イラク、エジプトに関する定性的手法を用いたエリートの言説分析と(b)これらの諸国の政党、政治組織、宗教組織ないしプロパガンダ機関（メディア）が発信する公的／非公的テキストデータの構築と予備的分析を行った。そして、(c)研究成果の一部を国内外の研究会、シンポジウム、国際会議で発表し、様々な研究者からのフィードバックを得た。
(a)については、まず、対象国として取り上げたレバノンとイラクの複数の日刊紙のデータベース（コーパス）構築を行った（末近、山尾）。また、レバノンについては、現地での報道関係者や研究者への聞き取り調査を行った（末近）。対象国の1つであるエジプトについては、エリートの言説に関する資料の収集を現地で実施した（千葉）。(b) は、分担者の千葉を中心に選定したテキストを形態素分析にかけた。その結果をもとに頻出単語をワードクラウドで可視化し、頻出単語の繋がり強度を図るNグラムを用いて共起ネットワークを作成した。また、末近と山尾を中心にアラビア語のテキストのコーパスの構築および分析のためのRおよびPaythonのコード開発を進めた。(c)については、成果の一部を暫定的に発表すべく、国内研究会の実施（9月、3月）、国際会議でのパネル報告（1月）、学術誌への投稿（和文・英文）を行った（英文投稿文については査読中）。また、新たなコード開発のために2020年度より専門の研究分担者を追加することを検討した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的にも先例のないアラビア語の計量テキスト分析を行うためのコーパスの安定的な構築とコード（Paython, R）の作成に成功したこと、そして、それを用いた分析を実際に実施し、一定の結果が得られるようになったことから、研究の遂行そのものが可能であることが確実となったため。これに加えて、その成果発表に対して、建設的かつ好意的なフィードバックを得ることができ、今後の研究の展開の広がりや訴求力を確認することができたため。
|
| Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、次の2段階に分けて想定されている。
第1に、(a)エリートの言説分析と現地での聞き取り調査を継続すると同時に、(b)本格的な計量テキスト分析を開始する。具体的には、いくつかの重要なイベント (外国の介入、テロ事件、軍事衝突、選挙など)を設定し、その前後で政治動員に用いられたキーワードとその構造がどのように変化したのか、時系列的変化を検証するための多変量解析によって明らかにする。その分析と結果は国内の研究会で精緻化し、学会(日本中東学会、世界政治学会(IPSA)を予定)でパネルを組織して報告する。
第2に、エリートの言説と計量テキスト分析の結果をもとに、(c)政治動員の因果効果・メカニズムを明らかにする。具体的には、政治エリートの言説、世論調査や選挙結果のデータ、テキストデータの計量分析結果を統合し、非公的メディアが形成する 新たな言説空間で展開される政治動員とそれへの対応の因果効果とメカニズムを浮き彫りにすることを目指す。これらの結果については、国内外の複数の学会(日本国際政治学会、ISAを予定)で報告するとともに、査読付き学術ジャーナル(『比較政治研究』、Asian Journal of Comparative Politicsなどを予定)へ投稿する。
|
