2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Conservation and Utilization of Cultural Landscape as Tourism Resource
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19H04378
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西山 徳明 北海道大学, 観光学高等研究センター, 教授 (60243979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麻生 美希 同志社女子大学, 生活科学部, 准教授 (00649733)
八百板 季穂 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (30609128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文化的景観 / CBT(コミュニティ・ベースド・ツーリズム) / DMO / 世界遺産 / 景観マネジメント / 文化財保存活用地域計画 / リビングヘリテージ |
Outline of Annual Research Achievements |
文化的景観概念の価値把握の新たな枠組みを構築するため阿蘇、竹富島、白川村、萩市の4地域に関する調査成果をとりまとめ、価値説明のストーリーの仮説的提案と、そのストーリーを説明するための映像制作を行った。また、チャチャポヤ(ペルー)の事例については、ペルー文化省の文化的景観課および関連課の専門家および地方政府(アマソナス州)とともに、ウトゥクバンバ渓谷およびペルー国内および日本の文化的景観の事例の価値付けおよびマネジメントの手法について6回のワークショップをリモートで行った。またレブカ(フィジー)とマプア大学(フィリピン)とオンラインWS等を実施した。 文化的景観の新たな価値把握に資する以下の事例について調査した。阿蘇は世界遺産登録の価値説明を日本の文化的景観制度を用いようとする初めての事例であるため、昨年度に引き続き景観マネジメントの強さと構成資産として登録できる範囲に相関性があるとの仮説を立て、阿蘇7市町村全域を対象としたGISを用いた価値評価の課題を整理した。平取町では、生業との関わりを価値付けの中心とする日本の文化的景観の考え方と世界文化遺産における考え方の違いを埋めることを目指し、アイヌ先住民が有していた自然に対する宇宙観(コスモロジー)が展開した沙流川流域の大景観と、生活権としてのイオル(IWOR)を2段階の景観単位として価値づける手法について検討し、地目から地区ごとの土地利用の特性を明らかにし、町全域の空間構造の把握を試みた。 その他、CBT によるコミュニティへの効果分析については、竹富島と大内宿において行政、住民、財団への現地追加調査をおこなった。 文化的景観に対する保存活用計画として新たに設定した「文化財保存活用地域計画」については、研究対象を太宰府市、萩市、中標津町、備前市に設定し計画策定に関する課題分析を行い、国内専門家による研究会を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の再流行による現地調査の制限、特に海外調査の制限によるマイナスが大きいが、今年度も後半から途上国政府や文化財保護機関とのリモートによる意見交換が可能となってきたことから、海外専門家との議論もでき、大幅な遅れをとることはなかった。一方で、これまでに収集した資料やデータの分析に十分な時間がとれ、それら分析作業を前倒しで実施できたため、総合的には、ほぼ計画通りに進捗していると言える。昨年度に引き続き、ペルーの文化省、観光省から提供された先方国内の文化財保護や観光政策に関する諸制度の資料、論文が充実して入手できた。 国内事例については、リモートと対面の両方を駆使し、関係組織や自治体担当者との意見交換、情報収集を実施でき、コロナ禍という特別な状況下における観光の動向を把握できたことは、研究企画時には想定していなかったものの、貴重な資料を得ることができたため、今後の分析に生かしてく予定である。 調査成果は、都市計画学会、日本建築学会へ発表する予定で準備を進めている他、2022年夏に学芸出版社より書籍として刊行予定で、執筆を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
前記の制作した4事例の映像は、最終年度に各事例地域の関係者や住民などにフィードバックし、文化的景観の価値理解や利用可能性に関する意見交換を現地行政、関係組織、住民を対象に行う予定である。 次年度は、コロナ禍が一定程度沈静化し、現地調査が実施できるとの前提に立ち、文化的景観の新たな価値把握の枠組みを構築するための追加現地調査を海外も含め実施する。海外事例調査としては、阿蘇において景観マネジメントの強さと構成資産として登録できる範囲に相関性があるとの仮説を立てた内容を実証するために、ヨーロッパの文化的景観で世界遺産登録されている資産を調査する(フランス・ブルゴーニュのクリマの文化的景観他)。また、ペルーのチャチャポヤ=ウトゥクバンバ渓谷(世界遺産国内暫定リスト)、フィジーのレブカ(世界文化遺産)の現地調査を再開する。 CBTによるコミュニティへの効果分析については、竹富島およびレブカにおいて現地調査をおこなう。各事例とも調査項目は、CBTによるツーリズムシステム、CBTが景観を管理してきた主体と伝統的なシステムに与えた影響、文化的景観管理とツーリズム開発の基本方針、保存管理計画と地域への影響などとする。 昨年度より追加課題とした、国内における文化遺産マネジメントの新たな潮流である「文化財保存活用地域計画」について、先進事例である萩市、太宰府市および新規策定時例である中標津町などにヒアリング調査を実施し、文化的景観制度との計画的整合性等について分析する。 成果の発表および理論構築ため、国内学会・研究会での報告に加え、本研究成果を公開するために国際シンポジウムまたはリモートのワークショップを開催する。ユネスコ、イコモスなどの国際機関の文化的景観専門家、国内専門家をまじえて、研究成果を報告すると同時に、新しい文化的景観概念についての意見交換をおこない、報告書にまとめる。
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Research Products
(2 results)