2021 Fiscal Year Annual Research Report
BL等の表現の国際的な広がりと、各国での現実のLGBTとの社会的関係の国際比較
Project/Area Number |
19H04388
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
藤本 由香里 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (50515939)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 仁 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (40601810)
ウェルカー ジェームズ 神奈川大学, 国際日本学部, 教授 (40710174)
長池 一美 大分大学, 国際教育研究推進機構, 教授 (90364992)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | LGBT / BL / 表現と現実 / 社会学的意識調査 / 国際比較 / 伝播と変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
■2021年度は、2020年度に行ったBLファンとBL非読者を対象にした社会学的意識調査の解析を集中して行った。結果については、石田と佐藤が日本社会学会で発表を行い、単純集計だが詳しい簡易報告書を2022年4月にWEB上で公開した。同性婚に対して、BL非読者:支持84.3% 反対15.7%、BLファン:支持95.1% 反対4.9%と有意な差が認められ、BL読者には性自認や性指向を男・女に定めない人の割合が有意に高いなど、いくつかの興味深い結果が示された。今後さらに専門的な分析を行っていく。 ■コロナによる海外渡航制限が依然として続き、海外調査は再び延期・中止された。タイ調査、フランスのY/CON調査、ともに22年度に延期して実施した。20年度AASで発表予定だったパネルは22年3月オンラインで発表。また23年3月にもAASで研究報告を行った。 ■20年度の予定が延期された藤本の企画・司会による日本マンガ学会『BLとメディア』シンポジウムも、21年度にオンラインで実施。登壇者である竹宮惠子・佐川俊彦・田亀源五郎・高口里純各氏および『BE×BOY』編集部、BL情報サイト「ちるちる」に対して事前に詳しい聞き取りを行うことができ、充実したシンポジウムとなった。また、田亀氏の証言に基づき「ロマンJUNE」に関する基礎調査も行った。 ■藤本の指導のもとで、中国人留学生の院生2人が中国のBLを研究対象に修論を完成。中国でアプリ配信される人気BLマンガは、日本に比べてゲイ同士という設定が多く、中国ではBLでもゲイの存在が前提とされていることが明らかになった。またファン研究では、中国における「偽腐」(BLファンなのにゲイに理解のない腐女子)という概念は非常に興味深く、中国では初期からファンコミュニティでゲイ当事者と協働していたことが明らかになった。これらの修論は「卒論・修論集」として自費出版した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
■国内の社会学的意識調査に関しては、予定以上のサンプル数の調査を行うことができ、簡易報告書の公開も予定の21年度中よりやや遅れたとはいえ、22年4月には公開でき、順調に進んでいるといえる。 ■しかし、21年度もコロナ禍はおさまらず、期待していた海外調査の再開をすることはできなかった。2019年度に予定以上の調査を行っていたことと、2022年度にはいくつかの調査を行うことができ、とくにタイでは充実した調査ができたことは何よりだったが、ブラジルなど予定していたにもかかわらず調査を断念せざるを得ない国も出てきてしまった。ドイツの調査は必要不可欠であるため、私費になるとしても2023年度に調査を行う予定である。 ■一方で、海外調査ができないため、国内で調査可能なことに注力した結果、「BLとメディア」シンポジウムに先立つ事前聞き取り調査において、日本国内のBLとLGBTのかかわりについて初めて分かったことが多く、期待以上の聞き取り調査となった。 ■また、藤本が大学院で指導する中国人留学生の指導を通じてというかたちではあるが、人気作品の日中比較分析において、また、キーパーソンへの聞き取りを含むBLファンコミュニティの活動の歴史研究を通じて、中国においては作品やBLファンコミュニティで、日本よりもはっきりとゲイの存在が意識されていることを具体的に明らかにすることができた。このことは予想以上の成果と言ってよい。 ■しかし本来は2022年度が研究の最終年度であり、この年にまとめの国際学会を開く予定だったが、2022年11月から日本国内の感染者数が世界でも突出した数字を示したことから、国際学会出席の内諾を得ていた複数の海外研究者から出席を見送りたいという申し出があり、最終まとめの国際学会は、2023年11月に延期して実施することになった。コロナのためとはいえ、これははっきりとした遅れとして認識される。
|
Strategy for Future Research Activity |
■2021年度の予算はコロナのため繰り越して22年度で決算したが、2022年度に開く予定だった最終まとめの国際学会は、2023年度11月に延期して開催することになった。そのため、2023年度は、この国際学会の開催がメインとなる。開催は2日間、タイの実写BLとLGBTとの関係を扱う「Thai Day」と、さまざまな国を扱う「International Day]の2日間に分けて開催する予定である。今後詳細を詰めることになるので、変更がある可能性はあるが、具体的には、次のようなテーマとプログラムを予定している(すでに内諾を得ている人も多いが、タイトルの確定がこれからなのと、まだ交渉中の方もいるため、科研メンバー以外の発表者の具体名は差し控える)。 ①Thai Day: Key Note Speech/タイBL受容史/タイ実写BLの展開/タイの「カップリング文化」/東南アジアとタイBLのファンコミュニティ(長池一美)/日本のタイBLファンコミュニティと受容の変容 ②International Day: これまでの調査の概要報告(藤本由香里&ジェームズ・ウェルカー)/LGBTとBLファンの協働・各国の事例(フランス/Y-CON、メキシコ/Oops! Summer Festa、フィリピン/BLUSH)/BL読者・非読者の差異に関する国内の社会学的意識調査結果報告(石田仁・佐藤麻衣)/『ロマンJUNE』におけるBLファンとゲイ当事者の共同空間(藤本由香里)/中国の「偽腐」について)/シス・ヘテロ(いわゆる多数派)でない海外のBLファンに関する比較研究(ジェームズ・ウェルカー) なお、この国際学会の記録は、できれば日英両言語での出版を考えている。 ■また、2023年には、コロナにより3年にわたって中止されていたドイツのYAYUCOの調査も行い、藤本とウェルカーはそこで発表する予定である。
|
Research Products
(48 results)