2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H04389
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小野沢 あかね 立教大学, 文学部, 教授 (00276700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉見 義明 中央大学, 企業研究所, 客員研究員 (40102884)
金 富子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40558102)
宮城 晴美 琉球大学, グローバル教育支援機構, 非常勤講師 (80618786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 性売買 / 性売買防止法 / 売春防止法 / 性売買問題解決のための全国連帯 / 買春 / #Me Too / 性搾取 / ムンチ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は(1)韓国での調査、(2)韓国から活動家を招聘して行なった研究会を中心に、重要な実績をあげることができた。 (1)9月下旬に韓国のソウル・全州・釜山を訪れ、これらの地域の女性人権センターの主要メンバーにその活動についてのインタビューを行なうとともに、ソウルにおける#Me Too運動、全州と釜山の性売買集結地閉鎖問題の調査等を行なった。韓国のフェミニズムは性売買を性搾取ととらえ、#Me too運動は反性搾取運動と深く結びついて性売買経験当事者女性自身もこれに参加していること、とくに全州では性売買集結地の閉鎖と女性の人権を重視したジェンダー・ガバナンスに基づく街作りが進んでいることなどの知見を得た。 (2)「性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ」のメンバー2人と大邱の女性人権センター代表を招聘し、10/20に非公開の研究会を開催した。ムンチメンバーは性売買経験、買春男性の実態、ムンチの活動について報告した。当事者にしかわからない性売買の実態とその反性売買の主張について、私たちは重要な知見を得た。これら(1)(2)は日本に紹介されたことのない重要かつ新しい知見である。 (3)日本において性搾取の危険にさらされている10代少女たちの支援を行なうColaboが韓国の活動家を招聘して企画したシンポジウム「10代少女たちをどう支えるか」(12/21)を共催し、当事者主体の支援についての日韓連帯活動について知見を得た。 (4)性売買に関する研究と活動をすすめる韓国とオーストラリアの研究者を招聘して研究会を行なった。イ・ナヨン(韓国中央大学校教授)「性売買/性労働?――韓国のフェミニストの論争と運動の歴史」(10/5)、キャロライン・ノーマ(ロイヤルメルボルン工科大学上級研究員)「オーストラリアの性売買の現状」(2020/2/22)。ほとんど日本に紹介されたことのない内容である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度4月に作成した2019年度の研究実施計画に照らして、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると考える。 昨年度は、その前年度の2019年3月に韓国の「全国連帯」代表と、釜山の女性人権センター「サルリム」の代表を日本に招いて行なったシンポジウム「性売買経験当事者女性とともに――韓国における性売買問題解決運動」(3/16、於立教大学)の成果をもとにして、以下の研究計画を立てた。(1)2019年9月に、全州と群山における性売買集結地と両地域の女性人権センターの調査を行ない、「性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ」のメンバーのインタビューを行う。(2)2020年3月に、ムンチのメンバー2人と大邱の女性人権センター代表を日本に招聘し、講演会を開催する。さらに(3)日本と(4)沖縄における脱性売買支援活動を調査し、(5)研究会を開催して議論を深める。 (1)については、当初の計画の全州と群山ではなく、現地の事情にもとづきソウル・全州・釜山を訪ねたが、当初の計画に加えて#Me Tooデモや、釜山の性売買集結地閉鎖問題を調査することもでき、当初の計画以上の新しい知見を得ることができた。(2)については、プライバシー上の問題から、講演会ではなく非公開の研究会として、3月ではなく10月20日に開催したが、当事者主体の反性売買運動について新たな知見を豊かに得ることができた。 (3)については日本の当事者支援団体Colaboのシンポジウムを共催(12/21)するなど知見を深め、(4)については代表者が沖縄での調査を継続するなどした。さらに(5)についても、海外の研究者(韓国のイ・ナヨン氏とオーストラリアのキャロライン・ノーマ氏)を招いた研究会を含めて何度か行なうことができ、理論的考察を深めた。よって、昨年度の研究は、当初の計画通り、おおむね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研課題申請時の研究計画では、2020年度の研究計画として(1)韓国の「性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ」のメンバーの著作をはじめとする韓国の性売買問題解決運動に関する文献収集と翻訳、(2)日本の当事者支援活動の調査、(3)韓国の研究者らとともに行なう沖縄での性売買調査、(4)台湾の性販売女性支援活動に関する視察・調査をあげていた。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大のため、今年度海外渡航や海外からの招聘を安全に行なうのはほぼ不可能と思われるので、計画を変更して本年度は下記の(1)(2)の活動に重点をおきつつ(4)~(6)も行なう。(3)はコロナウィルスの状況次第で模索するかもしれない。 (1)日韓の性売買と性販売女性の支援活動に関する情報発信を目的に、ホームページの作成を行なう。研究者に対して専門的な知見を発信するとともに、大学生等の初心者にも理解できる内容を目指す。さらに、できるだけ欧米その他の情報発信もめざす。このホームページの内容を元にしつつ、やがて共同研究の著作の企画・出版を行なう予定である。(2)韓国のムンチのメンバーをはじめ、各国の性売買経験当事者による著作やブログを翻訳し、その一部を(1)のHPに掲載する。さらに、ムンチ・メンバーの著作については、翻訳・出版を目指す。 (3)新型コロナウィルスの感染問題が解決した場合は、昨年度までの活動で築いてきた信頼関係をもとに、韓国の「性売買問題解決のための全国連帯」と協力して、ヨーロッパの性売買経験当事者を招聘したシンポジウムを開催する。あるいは、台湾における脱性売買支援活動の調査に訪れる。無理の場合、上記のいずれかに関するオンライン上での活動の可能性を模索する。 (4)来年度訪問予定のスウェーデン・ドイツの情報を各方面から集める。(5)日本の性売買と脱性売買支援活動を調査する。(6)反性搾取研究会を随時開催する。
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Research Products
(20 results)