2020 Fiscal Year Annual Research Report
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19H04422
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小池 聖一 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (70274024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中生 勝美 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (00222159)
柳瀬 善治 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (10782328)
平下 義記 広島経済大学, 経済学部, 准教授 (20780810)
川野 徳幸 広島大学, 平和センター, 教授 (30304463)
掛江 朋子 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 准教授 (30728019)
楊 小平 島根大学, 国際交流センター, 特任講師 (30736260)
永井 均 広島市立大学, 付置研究所, 教授 (40347620)
王 勁草 熊本大学, 大学教育統括管理運営機構附属多言語文化総合教育センター, 特任講師 (70827518)
石田 雅春 広島大学, 75年史編纂室, 准教授 (90457234)
繁沢 敦子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90779307)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原爆報道 / メディア / 平和 / 継承 / マスコミ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、前年度に引き続き、(1)「原爆報道」の取材から原稿までの過程を組み込んだ分析を行うため、原爆報道形成期の中国新聞における中心人物であった大牟田稔(後に中国新聞論説主幹)の関係文書を中心に資料収集を行った。大牟田稔関係文書と、平岡敬関係文書を通じて、被爆者取材を中心とする原爆報道が、沖縄の被爆者および韓国の被爆者という広がりをもったことを明らかにするとともに、大牟田稔関係文書から平岡敬広島市政時に、チェルノブイリ、アメリカにおける原爆展という形で国際的な広がりを実質的にもった点を理解した。同時に、それ以前の金井利博時の原爆白書運動との比較を通じて、運動と取材という関係性についても分析を行った。(2)被爆者側の対応については、広島大学教授森瀧市郎の研究により、思想的背景について明らかにした。この点は、倫理学としても深く分析が掘り下げられ、「原爆報道」の倫理性という点での分析も可能にしたと考えている。(3)原爆放射線調査委員会(ABCC、現在、財団法人放射線影響研究所)については、昨年に続き、コロナ禍から、海外調査が不可能であったため、国内における関係資料の収集と、関係者のインタビューを行った。また、研究集会についても、メールとオンラインとなった。この過程で、前年度に引きつき、資料の共有化が進んだ。同時に、データベース化という観点でも、基盤研究としてのすそ野は広がることとなったと考えている。また、「原爆報道」については、これまで、広島発として先行研究がなされてきたが、実態としては、原水爆禁止運動が逆輸入され、被爆者を前面にたてた報道スタイルを形成したこと、また、広島独自の「原爆白書運動」にも大きな問題点が存在したこと、が明らかになった。今後、この点について、精緻化させるとともに、「原爆報道」の展開内容についても、分析を続ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により、海外調査および国内でも東京出張などができなかったため、研究に遅れが生じている協力者もいるが、収集した資料の共有化を促進することで、研究内容の深化・交流という点では進展したと考えている。資料収集面では、大牟田文書の収集に遅れが生じているが、全体の9割程度は終了している。最終報告書における個別テーマについてもプロットが固まりつつあり、個別的にもそのための研究準備が進んだと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響のため、2021年度予定している国際シンポジウムも、オンラインとなると考えている。本研究では、むしろ、この機会を利用して研究基盤のすそ野を強化・拡大するために、情報交換として会議を開催し、より具体的な意見交換ができるように公開型のシンポジウムというよりは、実務的かつ自由な意見交換と情報交流の「場」として設定したいと考えている。このことは、コロナ禍でともに往来ができない、日米両国研究者相互にとって利益になると考えている。
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