2019 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of unexplored molecular nanocarbons
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19H05463
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊丹 健一郎 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 教授 (80311728)
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Project Period (FY) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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Keywords | ナノカーボン / グラフェンナノリボン / カーボンナノチューブ / 三次元ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、分子ナノカーボン合成を加速させる新合成法の開発、および分子ナノカーボンを起点としたカーボンナノチューブ、グラフェンナノリボン(GNR)、3次元ナノカーボン構造体の精密合成を実現するため、以下の事項に注力して取り組んだ。 まず分子ナノカーボン合成を加速させる新合成法の開発に関して、2カ所のC-H結合切断を経るフェニレントリフラートの縮環二量化反応を開発した。本反応はフェノール誘導体やジベンゾフラン誘導体をフィードストックとしたPAH、特にポリベンゾアセンの新たな合成戦略を提示した。また窒素原子を含むπ拡張反応であるaza-APEX反応の開発にも成功している。ナノカーボンにヘテロ原子を加えることによって、ドーピング効果による物性改変が期待できる。 GNRの精密合成に関しては、長さ、幅、エッジ構造の全てを制御可能な新規高分子重合法「リビングAPEX重合法」を開発し、GNRの精密合成を世界で初めて達成した。合成したのはフィヨルド型と呼ばれる幅1nm程度のGNRで、重合開始剤とモノマーの混合比率を変えるだけで最長170nm程度まで長さを自由自在に変えられる。また、APEX重合のリビング性を生かして精密なGNRのブロック共重合体の合成にも成功している。得られたフィヨルド型GNRに酸化反応を施すことでアームチェア型GNRに変換できることも見いだした。 炭素原子のみでの高密度共役を可能にする3次元炭素構造体の創製に関しては、酸触媒存在下で、ベンゼンジアセトアルデヒドと末端アリールアルキンとを作用させることで、立体的に歪んでいる4,5-ジアリールフェナントレンの迅速構築を達成した。さらに得られた4,5-ジアリールフェナントレンを用いて高度にねじれた非平面性芳香族大環状化合物の合成にも成功した。またパラ位でつながったベンゼン環のみからなるカテナンとトレフォイルノットの合成をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の一つの柱であるグラフェンナノリボン(GNR)の精密合成を世界で初めて達成した。フェナントレン(重合開始剤)と適切に分子設計を行ったシロール化合物(モノマー分子)とを我々が開発したパラジウム触媒系に付すことで、リビング性のある重合反応が進行することを見出した。本反応を用いてフィヨルド型とアームチェア型のGNRを精密合成した。また、重合開始剤とモノマー分子の混合比率を変えると長さを自在制御可能であり、さらにリビング性があるため二種類のモノマー分子を用いればブロック共重合体も合成可能であることを見出した。このように用いるモノマーの種類、量を変化させることで、さまざまな長さ、幅、エッジ構造のGNRの合成が可能であるため、本手法は今後のGNR合成にさらなる発展が見込めるものである。さらに現在、田岡化学工業株式会社と共同で量産化技術の確立をおこなっており、量産化の進展により世界中の研究者によってさまざまな応用展開研究が一気に加速することが期待される。 分子ナノカーボンを起点としたカーボンナノチューブ、三次元ナノカーボン構造体の精密合成に関しては、フェニレントリフラートの縮環二量化反応や歪みフェナントレン誘導体の迅速合成、またそれを用いた高度にねじれた非平面性芳香族大環状化合物の合成、パラ位でつながったベンゼン環のみからなるカテナンとトレフォイルノットの合成といった基礎的な新合成法の開発が進んでいる。加えて、ヘテロ原子のドーピング効果による物性改変を見据え、窒素原子を含むπ拡張反応であるaza-APEX反応の開発にも成功している。 以上のように本年はGNRの精密合成を達成しており、かつ基礎的な新合成法の開発が複数進んでいることから期待以上の進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、分子ナノカーボンを起点としたカーボンナノチューブ、グラフェンナノリボン(GNR)、3次元ナノカーボン構造体の精密合成を指向し、分子ナノカーボンの基礎的な新合成法の開発と、それに加え分子ナノカーボンの生体応用を試みる。 カーボンナノチューブの精密合成を指向し、新たなカーボンナノベルトの合成をおこなう。カーボンナノベルトは、カーボンナノチューブのオーダーメイド合成においてビルディングブロック、もしくは種となりうる分子である。そのためエッジ構造が異なる多種多様なカーボンナノベルト合成を行う必要がある。 GNRの精密合成に関しては我々が確立したリビングAPEX重合法を用いて、種々のGNRの合成に着手する。用いる重合開始剤やモノマー分子を変更することで、物性の異なるGNRの構築を目指す。 またK領域のAPEX反応を用いて3次元ナノカーボン構造体であるヘリセン状ナノカーボン分子の合成を行う。さらに新規分子ナノカーボンの合成を実現する新規縮環π拡張反応として、未達成であるM領域のAPEX反応の開発に着手する。これを開発できればナフタレンやクリセン、ペリレンなどのPAHをテンプレートとしたπ拡張分子を迅速的に構築可能である。さらに既に報告しているK領域のAPEX反応を合わせ用いれば、莫大な種類のナノグラフェンを迅速合成可能である。 ナノカーボンの生体応用に関しては、本研究によって初めて合成される様々な分子ナノカーボンの未知の応用を探るべく、まずは生体への応用に着手する。まずはこれまで我々が報告してきた分子ナノカーボンであるワープドナノグラフェンやシクロパラフェニレンなどの生体への影響を調べる。また、ベンゼンのバイオアイソスターであるキュバンを基盤としたナノカーボンライブラリーの迅速構築をおこない、ナノカーボンの新たな生物活性の発見を目指す。
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Research Products
(144 results)
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[Presentation] Catalytic C-H arylation of Cubane2020
Author(s)
Ryo Okude, Genki Mori, Akiko Yagi, and Kenichiro Itami
Organizer
The 3rd IRCCS-The 2nd Reaction Infography Joint International Symposium: “Reaction Imaging Meets Materials Science”
Int'l Joint Research
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[Presentation] One-Dimensional Self-Assembly of a Negatively Curved Arene2019
Author(s)
Kenta Kato, Yuh Hijikata, Jenny Pirillo, Nobuhiko Mitoma, Taishi Nishihara, Yusuke Nakanishi, Taito Hatakeyama, Takuma Kawada, Yasutomo Segawa, Lawrence T. Scott, Kenichiro Itami
Organizer
18th International Symposium on Novel Aromatic Compounds (ISNA)
Int'l Joint Research
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