2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a Wideband Microwave Absorber - Contributing to the Internet of Things Society Through Dual-phase Engineering
Project/Area Number |
19H05620
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 諭 東北大学, 工学研究科, 教授 (10171175)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 昌志 東北大学, 工学研究科, 助教 (00633942)
|
Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
|
Keywords | 電磁波吸収体 / 微粒子 / 複合 / 透磁率 / 誘電率 / 反射損失 / 飽和磁化 / 保磁力 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究では、磁性ソフト相・ハード相を含み、その二相組織が制御されたモディファイド磁性微粒子によって、次世代通信帯域で機能できる広帯域かつ薄型の電磁波吸収体の開発を目的とする。令和元(2019)年度は、ハードフェライト微粉末としてFe3O4、ソフト磁性粒子としてFeを購入し、共鳴周波数、電磁波吸収特性を測ることを目的とした。 【実験方法】(1) 上述の通りハード磁性フェライトとしてFe3O4、ソフト磁性としてFeの微粒子を購入し、まずこれらの磁気特性を調べた。(2)また、微粒子の充填率を変えた樹脂複合体を作製し、複素比透磁率μrの周波数依存性と共鳴周波数frを調べた。(3) 次に両者の充填率を変化させた混合粉末からなる樹脂複合体を作製し、(2)と同様、μrの周波数依存性と共鳴周波数frを調べた。(4)上述した(2)、(3)の結果から電磁波吸収特性を調べ、電磁波吸収体としての可能性を評価した。 【結果】得られた結果をまとめると以下のようになる。1.Feの樹脂複合体において樹脂の大きさを20μm以下に砕き、40%以上の量にすると誘電率は安定して低下するが、μrには大きな変化は見られなかった。2.FeならびにFe3O4とも樹脂複合体における樹脂の量を多くすることで飽和磁化ならびにμrが低下する。3.FeとFe3O4の混合粉末において飽和磁化はFe量が多くなるほど高く、保磁力は低下する。4.3の樹脂複合体においてFeとFe3O4の量比を変化させることによりfrの制御が可能である。5.4の樹脂複合体は、厚さは厚いものの0.9GHz~2GHzの周波数帯で反射損失RLも-20dB以下となり、電磁波吸収体として機能できる可能性があることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はフェライト粉末、Fe粉末を選択するところから研究をスタートさせた。既報の磁気的性質の値より、ハード磁性粉末としてマグネタイト(Fe2O3)、ソフト磁性粉末としてベースとなるFe粉末を選び、これらを用いることとした。マグネタイト粉末などは、作製することを試みたが、実験室レベルでは作製できる量がわずかであり、また、作製方法によって磁気特性がばらつくなど問題点が発生した。このため安定かつ多量に作製できなかったことから、市販粉末を購入して供試料とした。しかしながら、結果で示したように、ハード磁性粉末、ソフト磁性粉末、それぞれを用いた樹脂複合体を作製することが可能であり、これらの樹脂複合体において磁性粉末の充填率が磁気特性に影響すること、共鳴周波数や電磁波吸収周波数にシフトが見られることなどが判明した。さらに次年度における研究を前倒しして、両粉末を混合した場合の樹脂複合体も作製して、その磁気特性や電磁波吸収特性も確認することができていることから研究はおおむね順調に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度はハード磁性、ソフト磁性の両磁性粉末を用い、2019年度に確立した単純な混合方法のみならず、メカノフュージョン混合などの種々の方法を試みてモディファイド磁性粉末を作製する予定である。また、ハード磁性粉末も2019年度のマグネタイト(Fe3O4)に限らず、2価のFeイオンの一部をCoイオンで置換して、磁気異方性を増加させたコバルトフェライト粉末なども利用する。これらのモディファイド磁性粉末における、両磁性粉末の混合比を変化させて両相の体積分率を変化させた場合の磁気特性を測定するとともに、組織を調べ、その磁気特性との関係を明確化する。さらに時間的な余裕があればこれらの樹脂複合体を作製して電磁波吸収特性を評価する。
|