2020 Fiscal Year Annual Research Report
Efficiency and durability enhancement of solar cells using lead-free high dimensional halide perovskite materials
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19H05636
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
宮坂 力 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 特任教授 【東京大学先端科学技術研究センター・フェロー】 (00350687)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 高志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (60205557)
早瀬 修二 電気通信大学, i-パワードエネルギー・システム研究センター, 特任教授 (80336099)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | ペロブスカイト / 光電変換 / 無鉛組成 / 光物性 / 真空蒸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉛に代えてビスマス、スズ、チタン、銀などの環境適合性の高い金属カチオンによって構成される各種のペロブスカイト結晶材料を分担者との共同研究によって合成し、その光物性を吸光係数、バンドギャップ値、そして電子構造などの基本特性の点で優れる材料組成を絞りこんで、光電変換用の各種の結晶薄膜を製膜した。結晶を高質化するための製膜方法を溶液晶析法(桐蔭横浜大、電気通信大)と真空蒸着法(東大)の両手段によって検討した。ペロブスカイトにはオール無機の三次元結晶構造からなる組成を用いて、AサイトカチオンをCs、Agなどの無機イオンに置き換え、Bサイトの金属をBi、Ti、Snなどの2価/3価イオンに置き換え、さらにハロゲンをCl/Br混合、Br/I混合系として結晶構造を許容因子の点で安定化させ、耐熱性に優れる結晶薄膜を合成した。また、光物性については蛍光寿命の計測をもとに光発電における電荷再結合などの不効率要因を見積った。環境適合性に優れるBi系ハロゲン化ペロブスカイトについてはA3Bi2I9ならびにAg2BiI5組成のAサイトを他種カチオンに置き換え、ハロゲンを混合ハロゲン系とする組成変換によって、光物性の改良を進めた。Sn系ハロゲン化ペロブスカイトについては大気中のSn(II) を安定化させるためにグローブボックスの窒素雰囲気中で薄膜を合成し、逆層構造から成るセルを作製して光電特性の安定性を評価した。また、Ti系ハロゲン化ペロブスカイトの気相合成では、低気圧の雰囲気ではTi(IV)の安定化が困難である問題が顕著となったことから、Ti系は鉛フリー組成の候補から外すこととなった。光電変換素子の高効率化においては、無鉛型ペロブスカイト半導体のもつバンドレベルにエネルギー順位として適合する正孔輸送層としてチオフェン系導電性高分子を用いる方法が出力電圧の高い点で有望であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ag-Bi 系ペロブスカイトの光物性を高めるための成膜方法として、溶液成膜において溶媒組成を考慮したいくつか方法を見出すことができ、Ag-Bi系ペロブスカイトとしては比較的高い光電変換効率を得ることができた。Ag-Bi 系として鉛フリーのダブルペロブスカイトCs2AgBiBr6を用いた光電変換系を高める研究に着手し、この光電変換セルの作製に環境にやさしい天然由来のクロロフィル系正孔輸送材料が有効であることを見出し、論文発表した。これはダブルペロブスカイトを用いる高効率化としては前例のない方法である。一方、鉛フリーの候補材料の絞り込みとして、Ti 系ペロブスカイトについては、蒸着法を使う真空下で Ti(IV)の酸化数の不安定性が問題となることを見出し、また光物性が低い可能性からTi系材料を候補から外す結論を出すに至り、代わりにAg-Bi系以外の材料ではSn系に重心を向ける方策を決めた。また、光電変換素子の特性に影響する電荷輸送材料の最適化を進める中で、正孔輸送層として、無ドープのチオフェン系導電性高分子の薄膜が出力電圧(Voc)を高める点で有望であることを見出し、その特徴を鉛系のCsPbI2Brを用いたセル構成において実証し、論文発表した。同じチオフェン系導電性高分子は、無鉛型ペロブスカイト半導体のバンドレベルにエネルギー順位として適合することから、これを無鉛組成のAg2BiI5等に組み合わせる実験を進め、Vocを高める傾向を見出すことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
Ag-Bi 系ペロブスカイトにおいては光物性と効率を高めるための課題は開回路電圧の向上であり、電荷再結合の抑制につながる欠陥密度の低減であることから、この改善に向けて結晶の質を高める結晶組成の改良を進め、また界面の組成を改質する有機、無機の化合物を使ったドーパント技術を検討する。Ti 系ペロブスカイトは Ti(IV)の酸化数の不安定性に本質的な問題があることから 、研究の方向はSn (II)系の合成と安定化に向ける新たな材料として Pd 系ペロブスカイトの合成と評価にも研究をシフトする計画である。気相法(蒸着法)による合成では溶液法と違う制御によって結晶の質を高めることが目的であり、この目的に適した組成を選び出すことも実験計画に上げて光電変換特性の向上を図る。また界面構造の改善に適した電子輸送材料と正孔輸送材料の組み合わせを最適化して再結合による電圧損失を低減する高効率化開発を進める。
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Research Products
(12 results)