2020 Fiscal Year Annual Research Report
Psychological foundations of body scheme transformation via co-embodiment in virtual reality and its application
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19H05661
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣瀬 通孝 東京大学, 先端科学技術研究センター, 名誉教授 (40156716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 智利 立命館大学, BKC社系研究機構, 教授 (60336500)
広田 光一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80273332)
谷川 智洋 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任准教授 (80418657)
鳴海 拓志 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70614353)
雨宮 智浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70396175)
青山 一真 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (60783686)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | 融合身体 / 身体図式 / バーチャルリアリティ / we-mode / スキル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,加重平均型融合身体利用時に共同サイモン効果が生じるかを検討することでwe-modeが成立する条件を調査した.二人の参加者の融合比率を0-100%,25%-75%,50%-50%に設定して実験をおこなった結果,50%条件で融合して作業を分担した場合にのみ共同サイモン効果が生じることを示し,二人のユーザが均等に近い比率で融合していると認知した場合にのみ融合身体でのwe-modeが成立することを明らかにした.融合比率のバランスが偏った場合には行為の相補性が感じられないためにwe-modeが成立しにくいと推測される.そこで行為の相補性が感じられる範囲で寄与率が推定されるよう,寄与率推定にバイアスをかける手法を検討した.最初に寄与率100%で融合させ徐々に寄与率を低下させるフェーズを設けた場合と,最初から低い寄与率の融合身体を用いた場合,前者で行為主体感が向上することを示し,適切な体験導入によって実際の寄与率によらずにユーザが推定する寄与率を50%程度に保てる可能性を示唆した. 融合身体では同一の行為を相手が先におこなうために,行為より先に感覚フィードバックが返ってくる場合がある.そこで,そのような場合の行為主体感がどのようになるのかを明らかにするため,行為主体感が”行為→感覚フィードバック”の順序関係にどの程度規定されるかをオンライン実験で検討した.その結果,行為主体感は行為がフィードバックに先行するという通常の因果関係に強く規定されること,同時に主観的な同時性判断が重要なファクターであることを明らかにした. 得られた知見を元にスキル伝達手法を実現するため,多人数参加型VRトレーニングシステムの基盤を構築した.同時に,COVID-19の状況下でも実験を可能にするため,オンラインVRSNSを活用し,オンラインで身体スキルトレーニングに利用可能なVRシステムをテスト構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,中間評価段階までの目標として,(A)we-modeを成立させる融合身体構成法では,融合身体を利用した際にwe-modeが成立するのか,成立するとすればその条件は何であるのかを調べること,(B)融合身体において運動意図伝達と身体図式変容が起こる条件とメカニズムの解明では,運動意図伝達と行為主体感の関係を明らかにするために,自分の意図より先に行為が起こる場合の行為主体感の特性を調べること,また,身体図式の変容や定着を促すための身体の形状や見た目のあり方を調べること,そして(C)融合身体を用いた身体スキル伝達手法の有用性と適用限界の検証では,(A),(B)の知見を盛り込んでトレーニングをおこなうことが可能な基盤環境を構築しておくこと,また本研究で対象とする身体スキルを精査し,具体的に連携可能なフィールドを見つけて協力関係を築いたうえで,フィールドに適した目的を定め,具体的なトレーニングシステムの設計に落とし込むことを設定していた. COVID-19の影響を受け,対面でおこなう必要がある実験の遂行に支障が出た.そのため,一部の検証にはやや遅れが出た.一方で,迅速にオンラインでおこなえる実験系に切り替えて研究を立て直すことができ,(A)we-modeを成立させる融合身体構成法,(B)融合身体において運動意図伝達と身体図式変容が起こる条件とメカニズムの解明,(C)融合身体を用いた身体スキル伝達手法の有用性と適用限界の検証のどの項目においても,予定していた検証全体をカバーでき,上に述べてきたような十分な成果を得ることができている.こうした状況から,概ね順調に研究が進展しており,期待通りの成果が見込まれると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
we-modeを成立させる融合身体構成法については,これまで主に加重平均型融合身体について検討してきたが,他の融合方式についても検討を進める.同時に,引き続き加重平均型融合身体の検討を進め,50%-50%以外の融合率においてもwe-modeを成立させることができる手法の確立に取り組み,効率的なスキル伝達手法実現につなげる. 融合身体において運動意図伝達と身体図式変容が起こる条件とメカニズムの解明では,融合身体における二者間の相互作用が,行為主体感,運動意図伝達,作業の精度・効率に果たす役割について検討する.具体的には,リアルな他者の行為との融合と記録された他者の行為との融合を比較し,身体融合状態に対する認知が伝達効果に影響するかを明らかにすることで,リアルな他者との相互作用が自己認識や他者理解,そして他者の意図の理解などに果たす役割を明らかにしていく. 身体図式に関しては,引き続きどのような身体形状・サイズ・見た目の融合身体を用いれば学習者が学習時に実身体と異なる身体を使うことの悪影響を受けず,身体図式の変容を促進できるかを明らかにする.その上で,身体図式の変容が定着しやすい融合身体の方式や身体形状・サイズ・見た目を絞り込み,特定する. 融合身体を用いた身体スキル伝達手法の有用性と適用限界の検証では,融合身体を用いた身体スキル伝達手法の実社会におけるアプリケーションとして,(1)身体の静的な姿勢,(2)動的な動作,そして(3)意思や意図の伝達の3つの要素を縦軸に,得られた知見を横軸として,並行して進めている共同研究先(サービス業向け接客業務トレーニングシステム,消防士向け消火作業継続・退避判断訓練システム,対動物手術トレーニングシステム)の課題との適合度を検討し,適切な融合身体方式とその利用法を設計し,定量評価可能なタスクに落とし込む.
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Research Products
(40 results)