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2019 Fiscal Year Annual Research Report

報酬駆動的な視覚情報処理メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 19J01063
Research InstitutionNational Institute of Advanced Industrial Science and Technology

Principal Investigator

峯 知里  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 特別研究員(PD)

Project Period (FY) 2019-04-25 – 2022-03-31
Keywords空間的注意 / 視覚探索 / 報酬学習
Outline of Annual Research Achievements

本研究課題は,過去の報酬を伴う経験が視覚的注意に及ぼす影響について体系的な検討を行い,報酬駆動的な注意メカニズムを明らかにすることを目的とする。令和元年度は,報酬学習が注意制御に及ぼす影響に関する四つの研究に取り掛かり,下記の知見を見出した。
第一に,視野内の特定の位置に対して報酬が連合された事態において,高報酬と連合された位置は低報酬と連合された位置よりも,注意が捕捉されることを示した。また,この位置に対する報酬駆動的な注意捕捉は,観察者の連合に関する意識的な気づきに依存していることを明らかにした。さらに,観察された注意のバイアスは,高報酬と低報酬の位置の組み合わせの影響を受けないことを確認した。以上の結果より,位置と報酬の連合が注意制御に及ぼす影響は,数多くの先行研究で明らかにされてきた刺激と報酬の連合が注意に及ぼす影響とは異なるメカニズムで生じる可能性を示唆した。これらの知見に関しては,心理学分野の国際学術誌に投稿し,現在改稿中である。
第二に,報酬が刺激に対する注意の抑制に及ぼす影響を検討するため,視覚的印付けのパラダイムを用いて一連の実験を実施した。その結果,先行研究と同様に,高報酬と連合された刺激に対する注意の優先が認められた。しかし,それらの刺激に対する抑制の強化を示す証拠は確認されず,報酬は刺激に対する注意の抑制をモデュレートしないことを示唆した。この研究は,在外研究先であるオーストラリアのニューサウスウェールズ大学で実施し,研究成果は現在国際学術誌への投稿に向けて準備中である。
さらに,現段階では結論に至る十分な証拠は得られていないが,報酬と連合された刺激が高次の認知処理過程に及ぼす影響を明らかにするための研究に着手した。具体的には,刺激と報酬の連合が観察者の好みに及ぼす影響,そして,注意を駆動する刺激と報酬の連合学習の般化に関する実験を実施した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

令和元年度は,報酬駆動的な注意制御において,報酬と連合された位置に注意の優先が生じることを確認した。さらに,位置に対する報酬駆動的な注意と連合に関する観察者の知識について,自発的な気づきという新たな要因を検証することで先行研究の知見を拡張した。詳細なメカニズムについては今後の更なる検討を必要とするが,本研究の知見は,位置に対する注意バイアスと刺激に対する注意バイアスが異なるメカニズムで生じている可能性を示唆する点で,報酬駆動的な注意メカニズムに重要な示唆を与えた。
また,現段階において大部分が未解明となっている注意の抑制処理と報酬の関係性について検討し,先行研究の知見を再現するとともに,報酬の役割に関する複数の可能性を明らかにした。これらの発見は,今後の研究の指針を示すものとなった。
さらに,刺激と報酬の連合が注意処理に及ぼす影響だけでなく,その後の高次の認知処理過程に及ぼす影響を明らかにするための予備実験を行い,本研究が目指す報酬駆動的な注意メカニズムの解明において重要となる知見を深めた。したがって,「おおむね順調に進展している」と判断した。

Strategy for Future Research Activity

令和二年度は,第一に,位置と報酬の連合が注意の優先に及ぼす影響について,眼球運動測定を用いた検討を行い,より詳細なメカニズムを明らかにする。先行研究およびこれまでの研究では,位置と報酬の連合に気がついた観察者のみ,注意制御にバイアスが生じることを明らかにした。しかし,位置と報酬の連合に関する気づきがどのように注意の優先に影響を及ぼすのかに関しては未解明である。一つの可能性として,観察者の意図的な戦略の影響が挙げられる。具体的には,連合に関する情報を獲得することで,課題開始以前より報酬の出現を予期する位置を戦略的に注視していた可能性がある。そのため,今後の研究では,課題中の眼球運動を測定することでこの可能性を検証する。また,課題中の眼球運動パターンを分析することにより,報酬と連合された位置が注意だけでなく眼球運動を駆動するか否かを検討することも可能となる。
第二に,刺激に対する注意の抑制における報酬の影響に関して,現段階では報酬が抑制処理をモデュレートしないことを示唆してきた。しかし,これまでの研究で用いた課題特性及び実験操作が,これらの結果に影響した可能性が指摘されており,パラダイムの再検討が必要とされている。近年の研究では,統計学習を通して観察者が顕著な妨害刺激を抑制することが可能であることを報告しており(e.g., Wang & Theeuwes, 2018),本研究の問いである妨害刺激に対する抑制処理と報酬の関係性を検証するために有効なパラダイムであると考えられる。また,眼球運動を指標とした課題を用いることで,報酬と連合された刺激に対してどのように注意が駆動され,それらの刺激を抑制しているのかについて詳細なメカニズムを検討することが可能である。そのため,本研究では行動実験に加えて眼球運動測定を計画している。

  • Research Products

    (1 results)

All Other

All Int'l Joint Research (1 results)

  • [Int'l Joint Research] The University of New South Wales(オーストラリア)

    • Country Name
      AUSTRALIA
    • Counterpart Institution
      The University of New South Wales

URL: 

Published: 2021-01-27  

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