2019 Fiscal Year Annual Research Report
アブラナ科植物における近縁種花粉の排除機構を担う認識分子の解明
Project/Area Number |
19J01563
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 義宣 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 種間不和合性 / アブラナ科 / 膜タンパク質複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アブラナ科種間不和合性に関わる初の因子として同定されたSTIGMATIC PRIVACY 1 (SPRI1) の生化学的な解析を通じて、SPRI1が関わる種間不和合性機構の分子的なメカニズム解明を目的としている。 初年度は、SPRI1タンパク質を検出する条件の立ち上げを行った。大腸菌において組換えタンパク質の発現・精製を行い、得られた精製タンパク質を抗原として、SPRI1を認識するポリクローナル抗体を樹立した。これによってウェスタンブロッティングにおいてSPRI1を検出可能になった。二次元BN/SDS-PAGEによる乳頭細胞の膜タンパク質複合体の分離・検出を行ったところ、SPRI1タンパク質はおよそ300 kDa程度の複合体を形成することが明らかになった。これを形成するコンポーネントを探索するため、SPRI1タンパク質の共免疫沈降、及び共免疫沈降試料において質量分析によるプロテオミクス解析を行い、SPRI1と相互作用する候補タンパク質を同定した。 またシロイヌナズナのアクセッション間において、SPRI1タンパク質の機能に差異があることがこれまで報告されている。SPRI1には系統によって様々な変異が見つかっており、ハプロタイプBのSPRI1を持つ株は近縁種花粉を拒絶できない。ハプロタイプBはAと比較して、二箇所のアミノ酸置換とC末端に12アミノ酸の延長が見られる。このC末端の12アミノ酸を付加したハプロタイプAを発現させた株においてSPRI1タンパク質を検出したところ、ネイティブなハプロタイプAと比べてSPRI1の蓄積量が著しく減少しており、SPRI1タンパク質の不安定化がハプロタイプBを持つシロイヌナズナ系統の種間不和合性能の欠損の原因の一つとなっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
SPRI1は雌蕊の柱頭部分において発現するタンパク質であるが、微小器官である柱頭における生化学的な検出系の立ち上げには時間を要すると想定された。しかしながら、SPRI1を認識する抗体の作製及び高感度な検出条件を予定よりも早い段階で確立した。共免疫沈降、質量分析も予定通り進行させ、SPRI1相互作用因子の候補リストを得るに至っている。 また、シロイヌナズナ系統間でみられるSPRI1ハプロタイプの差異によってSPRI1の不安定化が起きていることを明らかにすることができた。これは当初計画していなかった成果であり、SPRI1の機能に迫る大きな手がかりとなりうるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
SPRI1共免疫沈降、質量分析から明らかになった候補因子をコードする遺伝子を欠損したT-DNAタグラインの取り寄せる。並行してCRISPR/Cas9による遺伝子破壊株の取得を行う。得られた欠損変異体において異種花粉の受粉試験を行い、種間不和合性が消失している変異体の探索を行う。種間不和合性に関与する因子が見つかれば、当該タンパク質を認識する抗体を樹立し、複合体分離等の解析によってSPRI1との相互作用の検証を行う。同定したタンパク質が持つ機能ドメイン等を基に、当該タンパク質が種間不和合性機構にどのように貢献しているのか解析を進める。 SPRI1ハプロタイプBに存在する2アミノ酸変異についてもハプロタイプAに導入を行い、SPRI1への機能に影響が見られるか解析を行う。C末端部位導入の結果と合わせて学術誌に論文として投稿する準備を行う。
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