2020 Fiscal Year Annual Research Report
エコロジカル・モデルを用いた子どもの自殺リスク要因に関する縦断的研究
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19J01614
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊角 彩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 子ども / 自殺 / 希死念慮 / ウェルビーイング / レジリエンス / 問題行動 / エコロジカルモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小学生高学年の子どもの自殺リスク要因を悉皆調査データを用いて縦断的に検討することである。東京都足立区「子どもの健康・生活実態調査」の質問紙データを用いて、小学校4・6年生時点の①希死念慮を主要アウトカム、②自己肯定感、③幸福度、④コーピング、⑤抑うつ傾向を副次アウトカムとして、子どもの自殺リスクに影響を与える家庭、学校、地域の要因を明らかにする。 2020年度は、小学校4年生時点の追跡調査データを用いて昨年度解析を行った2つの縦断研究について論文執筆と投稿を進めた。1つめの研究では、小学校1年生から4年生の間で虐待の頻度が増えることが子どものレジリエンスの減少と問題行動の増加につながることを明らかにした。2つめは、虐待を小学校1年生時・4年生両方で受けていても、学校でのソーシャル・キャピタルやロールモデルとなる大人の存在が子どものレジリエンスを高め、保護因子となることを示した研究である。さらに、虐待を含む親子の関わりが縦断的に子どもの自己肯定感と幸福度にどのように関連しているかを検討するため、構造方程式モデリングを用いて分析を行った。 また、本年度は新型コロナウイルス感染症が流行し、休校など子どもの生活に大きな変化が生まれた。子どものウェルビーイングや自殺リスクへの影響を検討することが急務であった。2018年1月から2020年5月における20歳未満の子どもの月間自殺数を用いて、休校期間中(2020年3-5月)と2018年、2019年の同時期の自殺数を比較することにより、流行の第一波が子どもの自殺に与える短期的影響を検討した。ポワソン回帰分析を用いて解析した結果、流行の第一波が子どもの自殺に与える短期的影響は休校期間中に見られなかったことが示された。暫定的な結果ではあるが、コロナ流行下での子どもの自殺リスクに関して重要な知見を国際的に発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学校4・6年生時点の追跡調査で、主要アウトカムである希死念慮やリスク要因であるいじめられた経験について尋ねることができなかったため、当初の計画とは異なる部分はあるが、新型コロナウイルス感染症流行下での子どものウェルビーイングについて追加で検討することもでき、社会情勢に応じて順調に研究を進められていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得た知見を元に、次年度は、さらに家庭の他の要因(経済的状況、家族構成の変化など)、学校でのいじめが子どものウェルビーイングとどのように関連しているかを新型コロナウイルス感染症流行の影響も加味した上で明らかにしたい。なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、本年度実施された小学校6年生時点の追跡調査のデータクリーニングが遅れたため、小学校6年生までの影響に関する検討は次年度に行う。また、同じく新型コロナウイルス感染症拡大の影響で調査項目の変更が難しく、本年度の調査で尋ねる予定であった主要アウトカムである希死念慮を尋ねることができなかったため、希死念慮については高知県など他の自治体で行われた調査データを用いて検討する予定である。
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Research Products
(3 results)