2021 Fiscal Year Annual Research Report
『懐風藻』編纂意図の解明―日本漢文学史の構築に向けて―
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19J01977
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
川上 萌実 神戸学院大学, 人文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 勅撰集 / 序 / 上表文 / 文体 / 凌雲集 / 文華秀麗集 / 経国集 / 懐風藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
『懐風藻』序との比較から出発して勅撰三集の序の文体に着目し、そこに見られる意識について考察を行なった。勅撰三集(『凌雲集』・『文華秀麗集』・『経国集』)の序はいずれも上表文の文体と内容を持ち、中国の伝統的な詩集の序とは異なる文体・内容を有する。これは勅撰三集が天皇の命をうけて編纂された官撰書であることが理由と考えられる。上表文的な文体を持つ序は、歴史書、和歌集など多方面の官撰書に継承されたが、序的な内容と上表文的な内容のどちらを重点的に書くかということに関しては、それぞれの置かれた状況に応じて選択されている様子がうかがえる。勅撰三集以降、官撰の漢詩集はのちに続くことはなかったが、勅撰三集の序が日本の官撰書の序のあり方に与えた影響は大きいと言える。 一方、私撰の『懐風藻』は、古来からの漢籍の序のあり方を踏襲している。『懐風藻』は私撰であり、特定の読者を前提としていないがゆえに、序において撰者自身の歴史観や文学観を表明できているとも考えられる。同時代の和歌集である『万葉集』に序がないことに代表されるように、上代の人々の文学的歴史観を知ることができる資料は極めて貴重である。この面からも、『懐風藻』序はやはり、更に考察していくに値すると思われるのである。 この研究成果は、「勅撰三集序の文体について―嵯峨朝官撰国書編纂のあり方―」(京都府立大学国中文学会『和漢語文研究』第19号、2021年11月)にまとめた。
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Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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