2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative study on active control of working memory process
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19J10430
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 千晶 金沢大学, 人間社会環境研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ワーキングメモリ / 指示忘却 / ラット / 放射状迷路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,指示忘却現象の検討を中心として,ワーキングメモリ過程を能動的に制御する能力について,比較心理学的に検討を行う。 (1) ラットを対象に,リハーサル制御との関連が指摘されている系列位置効果の初頭効果を利用して,指示忘却の検討を試みた。後のテストが信号された項目は初頭効果と新近効果を併せ持つU字型の系列位置曲線が認められるが,後のテストの不在が信号された項目は,短期的な保持と関連する新近効果のみが認められると予測した。後のテストを信号された項目のテストについて,平均値としては系列位置効果が認められなかったものの,U字型や初頭効果のみの系列位置曲線を示し,能動的なリハーサル制御を行ったことを示唆する個体と,新近効果のみを示す,受動的・短期的な保持のみを示す個体が認められた。このことから,能動的な記憶処理を伴う課題において,個体ごとに異なる課題方略を用いた可能性を見出した。 (2)ラットを対象に,異なる質感をもつ2種類の床材を後のテストの有無を信号する指示手がかりとして,能動的に記銘処理を制御する可能性についての検討を試みた。床材刺激は指示手がかりに適さない可能性が示唆された。 (3)ヒトを対象に,単語数の異なる2種のリストを用いた指示忘却手続きにより,記憶負荷の大小に応じて,記憶資源の再配分を柔軟に制御するのかを検討した。提示される単語数の多い群は,忘却項目から記銘項目への記憶資源再配分が積極的に行われることにより,記銘項目と比較して忘却項目の記憶成績が大きく低下する一方で,提示される単語数の少ない群は,記憶資源再配分があまり行われず,項目間の成績の差は小さくなると予測した。両群ともに指示忘却効果が認められたことから,記憶資源再配分が行われたことが示唆された。また,記憶負荷の大きさの影響は,ワーキングメモリの容量の限界に近づくほど大きくなる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,ラットが能動的にリハーサルを制御することの直接的な証拠を行動実験により得ることを目的の一つとした。ラットにおいて能動的なワーキングメモリ過程の制御を示す直接的な証拠は,現時点では得られていない。一方で,ワーキングメモリ過程の能動的な制御という“高度な”認知的処理を必要とする課題において,個体によって採用する方略が異なる可能性が高いという興味深い結果が得られた。ヒトにおいては,記憶負荷の大小により,異なる処理が行われている可能性が示唆された。以上を総合的に判断して,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットを対象に,課題の遂行にワーキングメモリの活用が求められる8方向放射状迷路を使用して,記憶間の干渉が生じる場面において,干渉を低減するような手がかり使用の方略を用いるか,順向性干渉事態において検討する。また,そのような方略を用いることができる場合に,個体差の分析,および後に有用となる手がかりを選択的かつ能動的に処理する可能性の検討へ転回する。 ヒトを対象に,項目数や回答方法など,本年度の実験手続きを改良し,記憶負荷の異なる条件において,記銘方略の柔軟な制御が行われるかを再度検討する。ワーキングメモリの容量と記憶負荷の影響についてさらに検討する。
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Research Products
(3 results)