2019 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児の発達経過における音声言語環境下での手指の役割に関する研究
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19J10447
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井口 亜希子 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 指文字 / 音韻意識 / ひらがな |
Outline of Annual Research Achievements |
音声言語と手指言語(手話・指文字)を併用する環境下にて養育される聴覚障害のある幼児を対象とし、指文字の習得過程について検討するための調査を実施した。なお、指文字とは、かな文字1つ1つに対応した手形(Manual Alphabet)であり、手形の連続により単語を空間上に綴ること(Finger Spelling)ができる。 調査は、特別支援学校(聴覚障害)3校の幼稚部に依頼し、幼児49名(年少児17名、年中児14名、年長児18名)の協力を得た。時期による経過を見るために1名に対して年度内に3回に渡り(第Ⅰ期:6~7月,第Ⅱ期:10~11月,第Ⅲ期:1~2月)、個別面接形式で課題(指文字/ひらがな清音1字音読課題、指文字表出課題、手指版/文字版弁別課題、音韻意識課題)と発達検査(改訂版随意運動発達検査-手指領域、改訂版絵画語彙発達検査)を実施した。その結果、清音の1字読み課題では、指文字・ひらがな共に年少児において第Ⅰ期~第Ⅲ期に平均得点が有意に増加し、平均得点が9割以上に達したのは、指文字は年中児・第Ⅱ期、ひらがなは年中児・第Ⅲ期であった。また、年少児の指文字の1字読みは、ひらがなが全く読めない時期から始まっていた。指文字は1音節の発声に対応させて口元近くで1手形が表出されるため、ひらがなに比べ、手形-音節の対応関係の学習が容易である可能性がある。今後は、この指文字/ひらがなの読み成績と手話・指文字弁別課題および音韻意識課題の成績、また対象児の語彙レベルや聴力レベル等との関連について分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、特別支援学校(聴覚障害)幼稚部3校の協力を得て、年度内に3回に渡り、予定していた課題を全て実施することができた。また、この調査結果をもとに、現在、各課題成績と個人要因等の関連について分析を進めている。以上のことから、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第Ⅰ期~第Ⅲ期の調査結果をもとに、指文字の読み・表出課題成績と手話・指文字弁別課題および音韻意識課題の成績、また各課題成績との対象児の語彙レベルや聴力レベル等との関連についてひらがなの読み課題成績との比較から分析を行う予定である。今後さらに、音声言語と手指言語を併用する環境下における幼児期の発達段階に応じた指文字の使用モデル検討する。
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