2019 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本社会における社会意識の趨勢解明:コーホート分析の開発と実証的議論
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19J11114
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 雄大 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | APC分析 / 社会統計学 / ベイズ統計モデリング / 社会意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,戦後から現代までの日本社会を対象として,社会意識がどのように変化してきたのかを把握することである.具体的には,「年齢・時代・コーホート」という時間軸上の基底的な要因における社会意識の時系列変化について捉えることを目指している.そこで本研究は,「(1)3効果が抱える識別問題を克服するため,ベイズ統計モデリングによるAPC分析を開発する」「(2)反復横断調査を利用し,社会意識の時間軸上に現れる変化を要因分解する」「(3)APC分析より得られた3効果を用いて,様々な社会意識が共変動するようなトレンドの存在を検討し,社会意識の包括的・長期的な動向を考察する」という3点に取り組んでいる. (1)については,R言語と「Stan」という確率的プログラミング言語を利用することで,応答変数に正規分布を仮定するモデルは,すでに「ベイズ統計モデリングによるAge-Period-Cohort分析:リッジ回帰モデル,ランダム効果モデル,ランダムウォークモデルの比較」という論文にて開発とシミュレーションを実施した.本年度はそれを発展させる形で,応答変数が2値をとるような「ロジスティック回帰モデル」と,応答変数が択一多項選択法によって取得された「多項ロジスティック回帰モデル」まで実装できた. (2)については,「日本人の意識」というNHK放送文化研究所が1973年から2013年まで5年間隔で行っている社会調査を用いた.またInglehartの価値変動論を参考として,応答変数は生活満足感からジェンダー規範あるいは政治意識やナショナリズムに関係する意識を選定した.そしてAPC分析によって3効果へ要因分解した知見は,「日本社会における価値意識の大局的なトレンドの検討:「日本人の意識」調査を用いたベイズ型Age-Period-Cohort分析」という報告書の論文として刊行した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)の方法論的な課題は当初の計画通り達成し,社会調査での様々な質問項目についてベイズ型APC分析を実施するための環境を整えることができた.(2)の3効果への要因分解の検討について,報告書の論文として刊行できた点は,当初の計画以上に進展した.しかし,予定していた学会報告は新型の感染症の影響により開催されなかったため,以上の進捗状況を総合的に判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,時系列分析の方法論的なレビューを行い,自己相関を持つパラメータに対してトレンドを適切に抽出できるような分析について検討する.そして(2)より要因分解した3効果が得られているため,(3)の様々な社会意識が共変動するようなトレンドの存在をAPC効果ごとに検証し,考察する点へと着手していく. また,当初において国外での学会にて報告する想定だったが,現在における感染症の影響により見通しが立たないため,国内の学会報告を優先するような予定の変更を行う.特に,昨年度で中止となった数理社会学会にて「社会意識における時系列変化の動向」の議論を報告し,学会でのコメントなどを経て査読付き学術雑誌へ論文の投稿を目指す.
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Research Products
(1 results)