2019 Fiscal Year Annual Research Report
魚類椎骨を対象とした数理解析と実験による骨の形態形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
19J11643
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂下 美咲 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 形態形成 / 3D形態 / 椎骨 / コンピュータシミュレーション / トポロジー最適化 / 形態計測 / マイクロCT / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では魚類の椎骨を対象として,骨の多様な形態の形成メカニズムを骨に加わる外力に基づいて明らかにすることを目的としている.これまでに,マイクロCTによる比較形態観察から,魚類の椎骨の異なる形態は共通の微細構造によって構成されていることが解っている.加えて,椎骨の形態と魚の遊泳法には関連が見られたため,本年度はトポロジー最適化を用いて外力依存的に形態を生成し,椎骨の形態と比較することで,形態と外力の関連を明らかにすることを目指した. 多様な荷重条件の組み合わせを設定し,網羅的に最適化を試みたところ,椎骨の形態を再現することができた.具体的には,魚類椎骨の側面にある板状構造が,遊泳の際に発生するであろう圧縮・曲げ荷重に対する最適化で再現できた.さらに,板状構造とは異なる椎骨の形態も別の荷重条件に対する最適化によって再現できた.結果から,椎骨の形態の多様性を骨に加わる外力の違いで説明できることが示唆できた.また,現状の数理モデルで再現不可能な椎骨の形態を絞り込み,形態的特徴から,それらの形成には骨の成長が重要であることが把握できた. 数理モデルを用いた形態再現と並行して,マイクロCTを用いて椎骨の成長過程を観察した.観察では,魚類椎骨に共通な微細構造である,椎骨中心から放射状に延びるシート状の骨の形成に着目した.その結果,シート状の骨は身体の成長拡大に合わせて伸長・分岐することにより,側面構造を大きくしていることが解った.また,末端での成長に伴って,中心付近から骨が削れていく様子も観察できた.これを踏まえて今後は,骨の放射方向の異方性・付加成長を数理モデルに導入し,改良を進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,数理モデルを用いた形態再現によって,椎骨の異なる形態を外力の違いから説明することが可能になり,骨形態と外力の関連を示唆する結果が得られた.荷重条件を網羅的に設定し形態再現を試みたことで,椎骨の形態形成には外力以外に骨の成長が重要であることも解り,数理モデル改良の妥当性・意味が明確化できた.さらに,数理モデル改良のためマイクロCTで観察した椎骨の成長過程は,既存研究で殆ど報告されていない,魚類椎骨における骨吸収作用を示唆するものとなった.次年度に組織染色観察を追加することで,骨吸収作用を明らかにし,新たな知見として報告できることが期待される.以上から,本研究は当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,組織染色を用いて骨の付加・吸収に関わる細胞活動を明らかにし,骨の成長過程をより詳細に把握する.結果を踏まえて,骨の放射方向の異方性・付加成長を数理モデルに導入し,改良する.改良した数理モデルを用いて,様々な荷重条件下での最適化により,本年度には再現できなかった椎骨の形態を再現していく.これにより,魚類椎骨の形態形成メカニズムを力学的要因・生物的要因の両面から理解する予定である.
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Research Products
(6 results)