2019 Fiscal Year Annual Research Report
中国青海省海南チベット族自治州におけるチベット人の伝統的民間信仰に関する研究
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19J12444
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| Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
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Principal Investigator |
拉 加本 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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| Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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| Keywords | 青海省 / チベット人 / 民間信仰 / アニェ・ユラ / 山神 / 儀礼 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
調査対象となる中国青海省海南チベット族自治州貴南県ボンコル村に居住するチベット人の人々は、チベット仏教、ボン教、土着神アニェ・ユラ（道教的）や山神信仰などが混交する宗教信仰を実践してきた。報告者は参与観察と聞き取り調査、文献調査、ICレコーダーやビデオカメラでの記録などの人類学的調査方法を用い、ボンコル村における上述のような混交的民間信仰とその社会的背景にある他民族との歴史的交流という2点に着目して調査研究を進めてきた。
これまでの調査では現地のロサル（正月）の際、アニェ・ユラ神像が置かれているアレク・ラカン（廟）に初詣する行事、祝詞、供物などの意味、ロサル前後の準備と儀式を参与観察し聞き取り調査を実施した。特に2019年度の調査では、山神が宿るとされる祠、S寺院とT寺院、ボンボ御堂といった宗教施設と調査村との関係、そこで行なわれている宗教的儀礼などに関するデータを収集した。また、仏教やボン教などが混交する宗教信仰の社会背景にある、村人と周辺の多民族との関係史やダム建設による移住史、今の村社会の組織などについて長老たちにインタビューを行い、当該地域に関するチベット語、中国語などの一次的文献を収集した。
これらのデータの一部を整理し、2019年6月1日～2日に東北大学で開催された日本文化人類学会第53回研究大会において中国チベット・アムド地域における仏教、ボン教、道教などの混淆的宗教実践」というテーマで研究発表を行い、2019年7月7日～13日にフランスのパリで開催された第15回国際チベット学術会議において「Discussing mixed religious beliefs and their social background」というタイトルで研究成果を発表した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者は令和1年度、3回の現地調査を実施した。第1回調査（2019年5月1～17日）では、ボンコル村から約53km離れたジュガン山頂に位置するアニェ・ジュリという山神のラプツェ(堆石塚)祭、および同村から約7km離れたアマ・スメが祀られたラプツェにおける信仰形態の調査を実施した。第2回調査（8月1日～9月15日）では、ボンコル村から約5km離れたアニェ・ユラ神廟で夏に行われるラトン祭について補充調査を行い、比較に向けて隣の貴徳県にある文昌廟センターとそこでのラツェ祭に関して調査した。また、貴南県のT寺院とS寺院において宗教施設の移転史などについて聞き取り調査を行った。第3回調査（10月1～20日）では、ボンコル村の放牧地において牧畜民が行うソンワ（守護神）儀礼に関して調査した。
これらの調査で得られたデータを整理・分析し、仏教徒、ボン教徒、仏教/ボン教徒を自認するそれぞれの人びとが行う信仰の対象、神格、儀礼の次第、供物、経や祝詞などの異同を分析し、混交する宗教実践とはいかなるものかが考察した。また、日本文化人類学会や国際チベット学術会議など国内外の研究集会において研究成果を発表した。以上により、順調に研究を進展していた成果を上げたと考える。
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| Strategy for Future Research Activity |
2020年4月からは、新型コロナウィルス感染情報に注意しながら、上記の国内外の研究発表会で得られたコメントやフィールド調査で得たデータを分析・考察し、発表原稿を学術論文にまとめて査読付きの雑誌に投稿することを目指す。2019年末に持ち帰った調査データの整理・分析を継続するとともに、学内の論文ゼミナールで学位論文の全体構想を発表し論文構成を組み立て、博士論文の執筆に専念する。
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