2019 Fiscal Year Annual Research Report
生体触媒固定化高分子ゲルの創製・機能化と環境・バイオプロセスへの応用
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19J13236
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
青柳 諒 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 生体触媒 / ゲル / 高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環境・バイオエネルギー分野で有用な反応系(以下に示す①~④)のそれぞれに対し機能性ゲル触媒を開発する。テーマは、①微生物/Cu固定化ゲルの開発とN2O生成反応への応用、②酵母固定化多孔質ゲルの創製とエタノール発酵への応用、③trypsin固定化ゲルの開発とタンパク質分解への応用、④アンモニア酸化細菌(AOB)固定化ゲルの開発とアンモニア酸化反応への応用である。生体触媒の固定化手法、高分子の特性、ゲルの構造などのパラメータが触媒活性や連続反応プロセスへの適用可能性に及ぼす影響を明らかにする。得られた知見から生体触媒固定化ゲルの設計指針に関する学術基盤を構築する。 昨年度は、種々の生体触媒固定化ゲルの作製技術を確立し、遊離および固定化の生体触媒を用いた反応実験条件を確立した。テーマ①:Cuと配位結合するアミン系官能基を導入したゲルを作製した。Cuイオンを含む種々の金属イオンの吸着特性を評価した。テーマ②:吸着法による酵母固定化多孔質ゲルの作製に成功した。当該ゲルは、繰り返しエタノール発酵への利用が可能だった。テーマ③:proteomics研究でのタンパク質消化に用いられるtrypsinの高分子ナノファイバーへの固定化に成功した。当該担体は、モデル基質の加水分解反応をよく触媒した。テーマ④:AOB固定化calcium alginateゲル粒子のアンモニア酸化反応の進行を、マイクロセンサを用いたゲル中心部の酸素濃度測定により評価した。さらに、ゲル中のO2の拡散速度とAOBが触媒するO2の反応速度を個別に求めて、反応進行時のゲル内部のO2の濃度分布を推算した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各テーマの具体的な成果を述べる。テーマ①:Cuイオンと配位結合するアミン系官能基としてpolyethylenimineをアクリルアミド系ゲルに導入したsemi-IPN構造のゲルを開発した。semi-IPN構造に起因して、このゲルは高強度であることを実証した。このゲルのCuイオンの選択吸着特性を明らかにした。Cu固定化ゲルはN2O生成反応を触媒した。テーマ②:ラジカル重合の過程で熱誘起相分離を生じさせる手法で多孔質構造のポリエチレングリコール系ゲルを開発した。吸着法により酵母固定化多孔質ゲルを作製し、酵母の保持能を明らかとした。また、固定化酵母よりも遊離して増殖したフリー酵母の方が発酵に寄与することを明らかとした。現在、英語論文を執筆中である。テーマ③:感温性N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)ポリマー(少量のアクリル酸を含む)を合成し、静電紡糸法によりNIPAナノファイバーを作製した。そして、アクリル酸部分にtrypsinを共有結合させて新規なtrypsin固定化NIPAナノファイバーを作製した。この担体はタンパク質のモデル物質の加水分解反応を触媒した。テーマ④:ゲル中の酸素の拡散係数Dgを求める新規な手法を開発した。具体的には、マイクロセンサを用いてcalcium alginateゲルおよび合成高分子ゲル粒子の中心部の酸素濃度を測定し、Fickの第2法則で解析して求めた。フリーAOBの一次反応速度定数kを求めた。Dgとkの値に基づいて、反応が定常状態で生じている時のAOB固定化ゲル内部のO2の濃度分布を推算した。得られた成果を学会発表(2件)し、現在、英語論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、各テーマで引き続き生体触媒固定化ゲルの作製と反応実験を行い、さらに、ゲル触媒の繰り返しおよび長期利用性能を明らかにし、それらを用いるプロセスの設計指針を構築して社会実装の可能性を検討する。①:Cu固定化ゲルに微生物(硝化細菌)を付着固定させて微生物/Cu固定化ゲルを作製し、そのN2O生成反応特性を調査する。②:連続撹拌槽型反応器を用いた連続発酵プロセスの実証試験と、例えばMonod式などを用いた反応速度解析結果に基づく操作の設計を行う。③:実サンプルを用いてタンパク質の消化を行い、プロテオーム解析への実用可能性を検証する。④:得られた成果をまとめ、論文を投稿する。4つのテーマを総括して共通真理を解明し体系化する。具体的には、各テーマで適用した固定化方法、高分子の特性、および構造がそれぞれの生体触媒反応特性に及ぼす影響を明らかにする。その知見を基に、機能性ゲル触媒の設計指針を確立する。それを応用して、各テーマのゲルのバージョンアップや新テーマを創出・実施する。
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