2019 Fiscal Year Annual Research Report
教育選抜における「受験主義」の検討を通じた日本型メリトクラシーの現代的変容
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19J14602
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 由依 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | メリトクラシー / 教育選抜 / 選抜の正統性 / 受験主義 / 入試ミス / 学歴ロンダリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大学学部入学段階での競争的筆記試験を重視する「受験主義」の観点から、日本の教育選抜の特徴とその現代的変容を捉えることを目的とする。 令和元年度は、まず1)人々の正統な選抜への期待や信頼を検討するための「入試ミス」に関する記事分析を進めた。具体的には、「入試ミス」を扱うことの多い新聞記事を対象とし、記事の収集と整理、分析を行った。その過程で、新聞記事では入試ミスの内容や大学側の謝罪についての分析は可能であるものの、人々の入試ミスへの捉え方を検討する点では、媒体選択に一定の課題があることがわかった。 次に、2)「学歴ロンダリング」とよばれる就学行動に対する社会的評価に関する日米インタビュー調査については、まず日本において他大学の大学院への進学という学歴ロンダリングに該当する就学行動をとった学生へのインタビュー調査が一定程度進んだため、一度調査を中断し予備的な分析を行うことで、聞き取り項目の焦点化をはかった。また、アメリカでの調査は協力者の事情から延期となってしまったものの、これまで得られた知見を国際学会(International Convention for Asia Scholars)で報告した。これを通じて、日本でのインタビューを国際的な観点から相対化することができ、次年度実施予定のアメリカ調査にもつながるものとなった。これらと並行して、メリトクラシーに関する先行研究の整理や、これまでの研究知見をまとめた論文の投稿も順次進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行上不可欠となるメリトクラシーに関する先行研究の検討を進めるとともに、記事分析とインタビュー調査においても一定の進展がみられ、また国際学会での発表を行い国内外の研究者から指摘を得ることもできたことから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)令和元年度は「入試ミス」を扱うことの多い新聞記事を対象に分析を行い、それには一定の意義があったものの、入試ミスへの人々の意識を捉える点では新聞は公式的な内容が多いことが分かったため、令和2年度は雑誌記事にも対象を広げて改めて分析を行う。 2)令和元年度に行った調査の予備分析の結果を踏まえた上で、引き続き日本での学生への調査を進めるとともに、延期となったアメリカ調査についても令和2年度秋の調査実施を目指し調整を進める。これら複数の調査から得られた知見は、それぞれ学会発表や論文の投稿を行いながら知見全体を総括し、最終的には博士論文とし研究成果をまとめる。
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