2019 Fiscal Year Annual Research Report
足底腱膜の形態的・力学的特性の定量評価を通じた足部のバネ機能に関する研究
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19J14912
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
塩谷 彦人 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 足部アーチ / 足底腱膜 / ランニング / 片脚跳躍 / 超音波剪断波エラストグラフィ / 三次元動作解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一過性および継続的な運動前後における足底腱膜の形態的・力学的特性の定量評価を通じて、足底腱膜の可塑性や足部のバネ機能・身体運動パフォーマンスとの関連に迫ることを目的としている。当該年度は予定を一部変更し、以下3点を実施した。 1) 足底腱膜の形態的・力学的特性の定量評価における足関節・中足趾節関節角度変化の影響を検証した。足関節受動背屈・中足趾節関節受動伸展に伴い、足底腱膜長は最大で8%程度伸長し、スティフネスは非線形な変化を示し(つま先領域)、その後は直線的な変化(線形領域)を示した。 2) 長距離ランナーと一般健常男性の比較を通し、足底腱膜の可塑性を検証した。まず、ランナーでは一般健常男性と比較して長距離のランニング直後の同一関節角度における足底腱膜のスティフネスや、アーチ高の低下が小さかった。また、右足の足底腱膜では競技的特性は見られなかったのに対し、コーナーを走る際により大きな負荷がかかる左足では、ランナーの足底腱膜のスティフネスはより高値を示した。以上のことから、人間の足底腱膜が一過性および継続的な身体運動に伴い変化する可塑性を有し、日常的なランニングへの従事によって機械的ストレスへの抵抗性を獲得すること、個の適応が生じる力学的な閾値が陸上トラックのコーナーリングで生じる負荷の左右差の間に存在することが示唆された。 3) 従来の生体力学的手法では、足部は1~4つの剛体セグメントに区分され、身体運動中の足部の変形は過小評価されてきた。そこで、足部の変形をより詳細に定量評価する手法を考案し、垂直方向への片脚跳躍・着地動作を対象に足部の変形における部位差を検証した。その結果、足部アーチの縦方向の変形は後足部で前足部と比較し小さいことが明らかとなり、これまでに示した足底腱膜のスティフネスにおける部位差と関連性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本学において新たに三次元動作解析システムおよび赤外線カメラが導入されたことにより、年次計画にはなかった身体運動中の足部の変形を定量評価する研究が新たに追加され、それらについて一定の結果が得られている。さらに、ランナーと一般人のランニングの急性効果に関する論文が受理された。加えて、論文執筆作業が進展しつつあり、複数の論文が国際誌に査読中または投稿準備中にある。また、1年目に計画していたデータ取得については予定通り実施されている。従って、本研究の最終的な目的遂行に対する進捗状況はおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見をもとに作製したフットウェアを用い、足底腱膜の形態的・力学的特性や足部のバネ機能、身体運動パフォーマンスへの効果を検証する。また、令和2年度は最終年度であることから、これまでに得られた成果と統合し、本研究課題に対する総合考察を行う。
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