2020 Fiscal Year Annual Research Report
クチキゴキブリの雌雄が互いの翅を食い合う: 初の両性による性的共食いの解明
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19J20022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大崎 遥花 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | クチキゴキブリ / 配偶行動 / 性的共食い / 婚姻贈呈 / 一夫一妻 / 亜社会性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 翅を食わせない実験手法の検討: 翅の食い合いの意義を検討するためには、翅の食い合いを行わない場合どのような影響があるのか調べる必要がある。しかし、翅を食えないようにする操作手法については決まった手法が存在しない。このため、今年度は昨年度に引き続き開発を継続し、翅を保護して食えないようにする手法の完成を目指した。接着フィルムとUVレジンによる翅のコーティングなどを試し、一定期間は翅を食われないようにする実験手法を完成させることに成功した。 2. 一夫一妻の厳密性の検討: 本研究で材料としているクチキゴキブリは一生に1頭の相手としか配偶しない厳密な一夫一妻と考えられているが、それを実証した研究がない。翅の食い合いの意義を検討する上で、一夫一妻の厳密性は重要な情報であり、なるべく早く調査する必要がある。よって、マイクロサテライトを用いたコロニーの親子解析を行うことで評価しようと考えた。今年度はMiseqで得られたクチキゴキブリのマイクロサテライトマーカー候補のプライマーを作成し、マイクロサテライトマーカー作成を途中段階まで進めることができた。 3. 論文執筆: 翅の食い合いは出版された論文では報告されていない行動である。このため、翅の食い合いの記載から始める必要があった。これまでに例のない行動で、独創性の高い内容であるためか、出版までにはかなり時間を要したが、国際誌(Ethology)へ翅の食い合いの記載論文を投稿し、2021年1月に出版された。 4. 学会発表: 国内では日本動物行動学会(オンライン)、日本生態学会(オンライン)にて、いずれもポスター発表を行った。行動学会では優秀ポスター賞をいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クチキゴキブリに翅を食わせないようにするための実験操作は新たに手法を開発しなければならないものであり、さらに翅を食べること以外の影響をも評価する必要がある。昨年度に開発した手法が実際に使えるものか試験したが、これはうまくいかず、別の手法の開発に取り組んだ。これにより、現実的な手法の開発に成功した。翅の食い合いの仮説の重要な要素である、遺伝的一夫一妻の検証についても、マイクロサテライトマーカーの開発が進行している。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けクチキゴキブリの生息地での調査・採集は実施できなかった。だが、本人が自分で開発した飼育方法の改良により、飼育していた個体を実験に用いることができたため、実験を予定通り実施することができた。 学会での発表では、予定していた国際学会での発表は中止となったが、国内の学会はオンライン開催となり予定通りの学会に参加して発表することができた。また、配偶ペアでのメスオス間での翅の食い合いという現象そのものについて報告した論文について、投稿し、出版まで進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルス感染症の影響で、来年度も野外調査が十分に実施できない可能性が高い。よって、マイクロサテライトマーカーによる血縁解析、翅の成分分析など実験室内で飼育個体を用いて行うことができる作業や、これまでに得られた結果を論文として出版する作業を中心に進める。
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Research Products
(3 results)