2020 Fiscal Year Annual Research Report
児童養護施設で暮らす子どもの生活世界と教育課題の克服 ‐社会関係資本に着目して‐
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19J20254
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇田 智佳 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 家族 / トラブルのミクロポリティクス / 情緒的理解 / 学校経験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、大きく分けて2つの調査を行った。第一に、昨年度から引き続き行っている児童養護施設でのフィールドワークを今年度も行った。小学生のユニットでの参与観察に加えて、中学生6名へのインタビューも実施した。以上のフィールドワークを通して得られた知見は①進路選択や将来展望を描くにあたっては、家族の影響が大きいこと、②家族についての語りが今の施設での生活との比較のなかでなされていたこと、③小学生たちの間で起こるトラブルの特徴の3点にまとめることができる。 こうした知見から、以下の通りに成果をまとめるとともに、今後の博論の構成の着想を得ることができた。 ①については、次年度の教育社会学会への論文投稿および学会発表を予定している。②については、家族についての記述実践に着目して、家族社会学会への論文投稿および学会発表を予定している。③は、「トラブルのミクロポリティクス」という視点を援用して記述した。次年度の子ども社会学会の『子ども社会研究』への投稿を予定している。 第二に、昨年度に引き続き小学校へのフィールドワークを行い、施設入所児に対する教育実践の様相を明らかにした。また、小学校でのフィールドワークによって得られたデータからは、施設入所児たちへの情緒的理解をしようと教師たちがさまざまな実践を行っている様相と、そうした理解を阻む要因として、児童養護施設との連携の難しさがあることを明らかにした。なお、以上の知見を子ども社会学会での発表を行ったとともに、『教育学研究』へ論文投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の調査がやや遅れたと判断した理由は以下の通りである。 まず、児童養護施設でのフィールドワークの進捗については、おおむね順調に進んでいるが、やや遅れている。当初の予定の中学生へのインタビューは終了し、分析の段階に入っている。しかし、追加のインタビューをまだ行えていない対象者もいるためである。追加のインタビューを可能な限り早急に行い、データを増やしていくことを考えている。また、論文次に、小学校へのフィールドワークについてである。小学校については、順調に進んでいると判断した。その理由としては、今年度行う予定であった教員へのインタビューを完遂し、施設入所児への教育実践の諸相と課題が把握できたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、まず、中学生への追加インタビューを完遂することである。施設長や中学生本人と丁寧に連絡を取り、インタビューの場を設定する。 また、小学校でのフィールドワークにおいて、教員の異動があり、学校組織の変容によって施設入所児への実践に変化が見られたのか、また新たに赴任した教員の施設入所児に対するまなざしなどもこれまでの研究と合わせて調査していきたい。
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