2020 Fiscal Year Annual Research Report
棘皮動物はなぜ「5」放射相称なのか:ヒトデを用いた至近要因の解明
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19J20566
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山川 隼平 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 棘皮動物 / 五放射相称 / ヒトデ |
Outline of Annual Research Achievements |
棘皮動物は左右相称の祖先から五放射相称の体制を獲得した。進化過程を通し棘皮動物はなぜ他でもなく五放射相称の体制を獲得したのだろうか。本研究ではイトマキヒトデをモデルとして五放射相称性の発生機構を明らかにし、その獲得プロセスの分子基盤の解明を目指す。これまでにヒトデ幼生体内に形成される五放射相称の成体原基に着目し、成体原基のパターン形成へ関与が示唆される候補因子を幾つか絞り込んだ。本研究ではヒトデにおいてゲノム編集技術等を導入することで、以上の因子の五放射形成への関与の検証を試みる。
2020年度は前年度に整備したイトマキヒトデにおけるゲノム編集技術TALEN・遺伝子機能解析アッセイを用いて、当初予定していた候補遺伝子の機能解析を進めた。まずそれぞれの候補因子を標的としたTALENを設計し、 受精卵へのTALEN mRNAの顕微注入による胚全体での遺伝子機能阻害を試みた。結果的に、いずれの候補因子に対して比較的高い効率で標的サイトを切断することに成功したものの、TALEN mRNA注入胚でも五放射相称の形成は正常に生じることが分かった。これらの問題に対しては現在も標的サイトの異なるTALENを設計するなどして、引き続き機能解析に取り組んでいる。その一方で、これまでに絞り込んだ五放射相称の形成候補因子とは異なる遺伝子についても、成体原基形成期のトランスクリプトーム解析等を用いて網羅的なスクリーニングを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は自らで整備した遺伝子機能解析アッセイを用いて、当初予定していた候補因子の機能解析を行うことができた。予想とは反して、これまで候補因子の機能阻害による五放射相称のパターニングへの影響は見られていないが、引き続き同様の解析を行うことで五放射相称のパターニング因子の同定に繋がると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、TALENを用いた候補因子の機能解析を続ける一方で、以下の2点の研究にも乗り出す。(1)成体原基形成期のトランスクリプトーム解析などを通して新たな候補因子の同定およびその機能解析に試みる。(2)また成体原基の形成プロセスと遺伝子の空間発現の詳細を精査することで、五放射相称のパターニングに関わる細胞間相互作用の実体を推定する。これらの解析を通して五放射相称の形成機構に迫る。
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