2019 Fiscal Year Annual Research Report
植物糖タンパク質分解酵素から紐解く成人腸内ビフィズス菌の共生関係
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19J20806
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐々木 優紀 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 植物糖タンパク質 / アラビノガラクタンプロテイン / ビフィズス菌 / 糖質分解酵素 / 共生関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
【成人型ビフィズス菌のアラビアガムAGP分解代謝メカニズムの解明】 これまでに、B. longum JCM7052株から、アラビアガム由来アラビノガラクタンプロテイン(AGP)の側鎖末端の二糖を切り出す、3-O-α-D-galactosyl-α-L-arabinofuranosidase (GAfase)を発見し、諸性質を解析してきた。本年度では、GAfaseの主要生成物であるGalp-α1,3-Ara(GA)の分解酵素の解析を主に行った。GAfaseと同一クラスターに保存されているGH36 α-galactosidaseは、α1,6結合を持つGalよりもα1,3結合を持つGalの方に高い活性を示し、試験した中では、GAが最良の天然基質であることがわかった。さらに、B. longum JCM 7052はGA資化性がみられ、糖輸送システムがコードされた遺伝子も隣接していることから、「B. longum JCM7052は、GAfaseによって切り出した二糖をまず、菌体内へ取り込み、菌体内のα-galactosidaseで単糖へと分解し、そこからエネルギーを得ることで増殖している。」という資化メカニズムが示唆された。 【GAfaseを介した菌株間の共生関係】 Gafaseを持っていないJCM 1217で末端のGAを除去したアラビアガムAGP培地で増殖が確認されたことから、GAfaseは単に糖源となるGAを供給するのみでなく、JCM 1217が持つ他のAGP分解酵素が働きやすくする役割を持つことが考えられた。この結果はビフィズス菌株間での共生関係を示唆するものであり、網羅的に腸内細菌を理解する上で重要な知見であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『GafaseによるアラビアガムAGP分解のメカニズムの全容を明らかにする』という点で重要な、主要生成物の菌体内分解酵素の性質決定ならびに、その二糖を唯一の炭素源とした培地上での資化性を行うことにより、GAfaseの主要生成物が菌体内のGH36 α-galactosidaseの優良な基質であることと、糖源として利用できることを明らかにしたため。 また、GAfaseの働きによって、JCM1217株が増殖できるようになったという結果は、これまでに報告されている成人型ビフィズス菌同士の生態学的な共存性を裏付ける結果になる可能性があり、本研究の目的である『GAfaseを介したビフィズス菌同士の共生関係の解明』において重要な結果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって示唆された、GAfaseによる他の菌株への生育の影響をさらに検討していく。具体的には、GAfaseによってB, longum JCM1217が持つ他のAGP分解酵素が作用しやすくなるような効果がみられるかを、組み換え酵素を用いて検討を行う。また、JCM1217とJCM7052を共培養後、リアルタイムPCRを行い菌数変化をモニターすることによって、単独培養時との違いを明らかにする。 さらにビフィズス菌同士の共生関係をより網羅的に解析を行うため、ヒトの腸内環境を模したin vitroの複合系にアラビアガムAGPを投与し、次世代シークエンサーによる菌叢解析によって投与前後の菌叢変化の解析を行う。また、アラビアガムAGPの投与によりビフィズス菌が増加したグループ(レスポンダー)と増加しなかったグループ(ノンレスポンダー)それぞれのビフィズス菌の菌叢パターンの違いを解析する。
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Research Products
(3 results)