2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J21085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河上 龍郎 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 持ち上げ可能性 / del Pezzo曲面 / Frobenius分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は,長岡大氏と共同で,特異点を持つ曲面に対し,log liftという持ち上げ可能性を導入し,標準特異点を持つdel Pezzo曲面(これをDu Val del Pezzo曲面と呼ぶ)に関し,そのlog lift可能性と,正標数でのみ実現可能な特異点型,反標準因子の一般元の特異性,Kodairaの消滅定理の不成立など正標数特有の病理的現象との関係性を明らかにした.
まず,正標数の曲面がlog lift可能であるとは,その曲面の特異点解消と例外因子の対がWitt環に持ち上がることをいう.曲面が高々有理特異点のみを持つ場合は,log lift可能性は曲面そのものの持ち上げ可能性よりも強い主張である. 多様体が滑らかな場合は,Witt環への持ち上げ可能性があると正標数特有の病理的現象が起こりにくいことが知られているが,特異点がある場合には,この限りでなく,持ち上げ可能であっても病理的現象は起こり得る.実際,最初に挙げた各病理的現象を満たすDu Val del Pezzo曲面は存在するが,全てのDu Val del Pezzo曲面それ自体はWitt環に持ち上がる.
本研究では,正標数のDu Val del Pezzo曲面に対し,log lift可能性と正標数の病理的現象の関係性を明らかにし,さらに各病理的現象に関し,それが実際に起こるDu Val del Pezzo曲面を全て分類した.また,これに関連し,Frobenius分裂性を持つDu Val del Pezzo曲面に関しても研究を行なった.特に,Frobenius分裂なDu Val del Pezzo曲面の反標準因子の一般元は滑らかであることを示したが,これはFrobenius分裂性とBertiniの定理の相関を表しているという点で興味深いと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度目標としていたlog lift可能性と正標数の病理的現象に関する研究に関して,Du Val del Pezzo曲面というクラスで満足のいく結果が得られた.また,Frobenius分裂性を持つDu Val del Pezzo曲面を調べることで,Frobenius分裂性とBertiniの定理に関連があることも分かった.このlog liftに関する研究は,より広いクラスの曲面に対し,可能であると思われ,今後の発展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
対数的標準対を持つ小平次元が非正な曲面に対し,そのlog lift可能性を調べる.そのためにまず,このクラスの曲面に対し,Bogomolov-Sommese消滅定理を示す.この消滅定理を使い,log tangent束の第二コホモロジーの消滅を導くことで,ある程度標数が大きければlog lift可能であることを示す.そして,log lift不可能な曲面を詳細に調べることで,log lift可能性と正標数の病理的現象の関係性を明らかにする.
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