2020 Fiscal Year Annual Research Report
女性向けAV視聴者の社会学的研究:性的主体化とセクシュアル・ストーリーの観点から
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19J21151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 恵典 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ポルノグラフィ / フェミニズム / カルチュラル・スタディーズ / 性的主体化 / アダルトビデオ / 計量テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
①ポルノ映像を構成する「視線」と性的主体化・ジェンダー化の関係を、第93回日本社会学会大会で11月に報告した。ポルノは、男性主観で女性を同一化不可能な他者として映し出すという視線のあり方に、男性ジェンダー化の装置としての仕組みが指摘されている。しかし、女性向けAVは男性向けAVの視線を180度反転させるものではない。ここから、女性向けAVは、男性向けAVとは異なる性的主体化・ジェンダー化の仕組みを備える性の装置である可能性が示唆された。 ②ヘテロ男性を主なターゲットとするAVを、一部を切り取る以上の編集を経ずに「女性向け」のアダルト動画として提供するサイトに着目した研究結果を、関東社会学会第68回大会で12月に誌上報告を行った。これは、ポルノを「異なる見方」に開くという実践の、フェミニズムに対する可能性と限界を経験的に明らかにするものである。 ③視聴者へのインタビューデータを、なぜ極めて私秘的な事柄にかかわるこの調査が可能だったのか反省的に捉え返して分析した。語りの誕生を聴き手集団で説明するK. プラマーの理論枠組みに着目し、女性向けAVを視聴するファンが、いかに多様なコミュニティとの関係性の取り結び方によって語りを産出しているのかを分析した。 ④アダルト動画販売サイト「FANZA」の計量テキスト分析の結果を、2021年3月にソーシャル・コンピュテーション学会第13回研究例会で報告を行った。女性向けAVと男性向けAVの商品説明文の特徴語を、TF-IDF値とcos類似度によって比較した。その結果、男性向けAVの商品説明文は、プレイ内容、女性の身体パーツ、男女の快感、若さについての語が特徴であった。女性向けAVは、恋人との性交が多いことが特徴であっただけでなく、「自分」や対の関係性への関心が高いメーカーと、「男子」すなわち他者への関心が高いメーカーがあるなど、差異も確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度の推進方策として、性的主体化・ジェンダー化概念を軸に女性向けアダルトビデオを論じるという課題に、計量テキスト分析と内容分析を通して実証的に取り組むことを掲げていた。上記の研究実績①②④のとおり、計画通りに学会報告に結実させているといえる。 加えて、研究実績③のとおり、副題の「セクシュアル・ストーリー」に関わる分析にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、研究実績①②③を査読論文として整理し、投稿・掲載することを目指す。また、これまでの実証研究と理論的考察を往還しながら、女性向けAVというメディアとその視聴者に関する総合的な分析をまとめていく。 ①第2年度では、女性向けAVが男性向けAVとは異なる性的主体化・ジェンダー化の仕組みを備える性の装置であると示唆されたところまでは進捗があった。第3年度は、漫画や映像を分析する社会学的な方法論、および性的主体化についての先行研究の摂取によって、女性向けAVがいかなる映像的仕組みをもつ性の装置であるのか結論づけることを目指す。 ②第2年度では、ポルノをめぐる議論に対するJ. バトラーの反ポルノ批判の位置づけ、およびバトラーの理論が自分の研究でどこまで実証と結びつけられているかに課題があった。第3年度は、ポルノに関する先行研究の整理と、質的研究法のさらなる会得を通じ、洗練を目指す。 ③第2年度では、女性向けAVを視聴するファンがなぜ・いかにして、その極めて私秘的と思われる話題についてインタビュー調査現場で語れるのか、その要因はファンの類型・多様性とどのような結びつきがあるかを明らかにした。しかし、その問いと結論が当該分野にいかなる知見をもたらしているか曖昧である点に課題があった。そこで、ポルノ研究だけでなく、ファン研究や生活史研究なども摂取し、論文化を目指す。
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Research Products
(4 results)