2019 Fiscal Year Annual Research Report
水素授受反応に立脚した高密度水素貯蔵を担うレドックス高分子の創出と機能開拓
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19J21527
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岡 弘樹 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | レドックス高分子 / 水素貯蔵 / 有機二次電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 高い質量水素密度を有する有機レドックス高分子の創出 コンパクト分子構造で密度高いポリビニルフルオレノールを設計・合成した。その電荷および水素(プロトン)の交換反応と水素発生(110 mL/g, 1.0 wt%)を明らかにした(Macromol. Rapid. Commun. 2019)。水素付加・脱離体をフルオレノールからキノキサリンなどの窒素複素環式化合物に拡張し、質量水素密度として有機ハイドライドと同程度の数wt%のゲル状の水素キャリアとして試験した。 2. 有機レドックス高分子での高速な水素交換反応の解明とデバイスへの展開 有機レドックス高分子による高速でのプロトン・電子の交換反応を電気化学測定により明らかにした。レドックス高分子がプロトン交換反応に基づき、酸性水電解液中高い出力を有する負極材料として働くことを見出した。同高分子を負極として使用し、高い出力・耐久性をもつ有機空気二次電池をはじめて実証した(Chem. Commun. 2020、同雑誌裏表紙に選出)。 スウェーデン・ウプサラ大と一部共同してレドックス高分子でのハイドロキノン/キノン間のプロトン移動に注目し、電荷輸送能と共役した過程として特徴づけ、その基礎的な電気化学特性を明らかにした。さらに、同高分子を正極、水溶液電解質を使用した高い起電力を有する有機リチウム電池の創製、実証につなげた(Electrochem. Commun. 2019)。今後も引き続きウプサラ大と共同を続け、レドックス高分子の電荷・水素の輸送能を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は計画通りに進捗しており、令和元年度の特筆すべき研究成果は,水素キャリヤ高分子が酸型空気電池の負極材料として働くことを着想し、サイクル特性に優れた有機空気二次電池をはじめて実証した点にあり、成果として当初に期待した以上の進展に繋がっている。 論文発表3報も順調で、裏表紙(Chemical Communications誌)への掲載など,研究内容の効果的なアピールにも尽力している。また、連名含む国内学会10件、海外国際会議2件にて研究発表し、国内学会での研究奨励賞1件、国際会議でのポスター賞2件など対外的に高い評価を受けている。以上より,研究進捗状況は,当初の期待以上であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度では、①水素キャリア高分子としての究極の質量水素密度、②令和元年度に創製した有機空気二次電池の高性能化に取り組みたい。 ①については窒素複素環式化合物を2,5-ジメチルピラジンに、アルコール類を1,4-ブタンジオールに拡張し、高い質量水素密度(~5 wt%)の達成を目指す。その際、素早い脱水素反応を可能とする触媒についても検討、最適化する。 ②については、ナフトキノンやキノキサリンなど、酸性水電解液中で卑な電位で酸化還元することが予備的にわかっている有機分子に着目し、これを高分子構造に組み込むことでレドックス高分子を得る。同高分子の基礎物性を分光法、熱分析、電気化学測定により明らかにしたうえで、同高分子を有機空気二次電池の負極に取り込み、水溶液電解質を使用した電池として高いエネルギー密度、高い起電力(~1.0 V)を狙う。さらに、実用化に近いコンパクトなデバイス作成を目指し、高分子電解質膜を使用した有機空気二次電池の実証も試みる。 引き続き、典・ウプサラ大とも共同し、高分子凝縮相内での電荷・プロトンの交換反応を独自の電気化学的手法により解明する。
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Research Products
(17 results)