2019 Fiscal Year Annual Research Report
クルクミノイドの細胞内への取り込みの制御:疾病治癒への応用に向けて
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19J21566
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
板谷 麻由子 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | クルクミン / アルブミン / ピペリン / THP-1単球細胞 / THP-1マクロファージ / 共焦点顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は【細胞用いて、BSAとの結合を抑制した場合のCNs(クルクミン(CUR)、ビスデメトキシクルクミン(BDMC)、デメトキシクルクミン(DMC))の細胞取り込み量と生理作用の発現との関連性を明らかにする事】を目標に研究を進めた。まず、BSAとの結合がCNsよりも強い化合物を特定するため、蛍光クエンチング法を用いて化合物とCNsとの結合定数を比較した。結果、CURと共存した際に生理作用を向上させることが報告されているピペリン(PIP)はCNsと比較して、BSAに強く結合する事を明らかにした。続いて、CURにはTHP-1単球細胞に処理した時にアポトーシスを誘導する事が報告されていたため、各CNsとPIPを共存させた場合の細胞生存率を評価した。結果、下記に述べる通り、BDMCやDMCはそれらの構造的な問題から沈殿が観察され、再現性の高いデータが得られなかった。一方で、PIPとCURを共存させた場合、THP-1単球細胞の生存率がCUR単体投与時に比べ有意に減少した。これが、CURの取り込みの増加によって引き起こされている事を証明するため、CURの細胞取り込み量を評価したところ、その取り込み量は約3倍増加した。以上のことから、血清タンパクのアルブミンとの結合を抑制する事で、CURの細胞への取り込みが増え、生理作用の増加につながる仮説が支持される結果が得られた。さらに、今後、疾病時の炎症作用に関わるマクロファージでも同様の現象がみられるかを評価した。THP-1単球細胞をマクロファージに分化させ、PIPとCURを用いて同様の評価をしたところ、単球細胞のような細胞生存率の減少は観察されなかった一方で、CURの取り込み量は同様に約3倍増加した。共焦点顕微鏡で細胞内のCURの分布を調べたところ、PIPを共存させた際にはミトコンドリア近辺にCURの蓄積が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞取り込み試験と生理作用として細胞生存率を評価した際に、再現性が取れず、その原因解明に時間を費やしたためである。目的とするナノ粒子を作成するにあたり、内包するCNs類縁体(CUR、BDMC、DMC)を選定する事を目的に実験を開始した。BSAを阻害した場合に、最も細胞内に取り込まれ、THP-1の細胞生存率を減少させるCNsを特定するため、3種のCNsの細胞取り込み量とこれらを処理した際のTHP-1単球細胞生存率を評価した。まず、細胞生存率の評価に関して、WST-1試験で評価した。細胞外の色素を定量する本法では、CNs自体がその発色に影響してしまい、顕微鏡で観察された細胞生存率の減少が、吸光度分析では評価できなかった。そこで、WST-1試薬ではなく、細胞内の色素を図るMTT試薬に変更したところ、再現性の高いデータが得られた。また、細胞取り込み試験においては、BSAとの相互作用を阻害するような化合物(PIP)を共存させた際、BDMCやDMCの凝集が観察され、その形成度合によって、再現性が取れないという現象が起こった。種々の文献や有機化学的な知見を参照にこの原因を追究したところ、BDMCやDMCはCURに比べ構造上、分子間相互作用が強く、BSAとの結合を阻害すると、凝集しやすい事が判明し、今後の実験で用いていくには難しい事がわかった。また、申請書の通り、UC Davisにて、ルコーストランスポーターを標的とすることを目標に、糖脂質を多く含む牛乳由来のリポソームの作成に従事し、粒子の作製に成功した。一方で、材質の不安定性から、さらなる評価への応用は困難であると考えた。現在、大豆由来のレシチン等をベースに標的受容体に結合するペプチドを結合させたナノ粒子の作製に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、2019年度、BSAとの結合を阻害した際に、CURが遺伝子発現にどのような影響を与えるのかその詳細な検証と、安定なナノ粒子の作製が未達成である。これを踏まえ、2020年度以降はTHP-1の詳細な【THP-1マクロファージの炎症時にCURとPIPを共存させた際の、炎症性サイトカインの生成量の評価】と【ナノ粒子の作製・評価】を並列して行う予定である。まず前者に関しては、THP-1マクロファージをLPSで処理し、TNFα、IL-1β、IL-6の遺伝子発現量をRT-PCRで評価する予定である。後者のナノ粒子の作製に関しては、CURもしくはCURとPIPを含む大豆レシチンをベースとしたsolid lipid ナノ粒子(CUR-SLNPs, CUR+PIP-SLNPs)を種々の方法で作成し、SEM・TEMで形状を評価する。細胞のLRP-1レセプターに結合するペプチド(Angiopep-2 (AP2))をNHS/ODS反応を利用して粒子表面に接着させる(CUR-SLNPs-AP2, CUR+PIP-SLNPs-AP2)。ナノ粒子の評価のため、(1)トランスウェル及び、(2)共焦点顕微鏡を用いてCURの移行量の評価を確認する。(1)に関しては、タイトジャンクションを形成し、かつLRP-1の発現量が多い細胞をWESTEN Blotにより特定し、トランスウェル上部で培養する。作成した4種のSLNPsを投与し、細胞内部・バソラティカル側へのCURの移行量を評価する。(2)に関しては共焦点顕微鏡を活用し、4種のSLNPsを投与した細胞のCURの分布を確認する。後期は、評価した細胞の生理作用の評価を行う。取り込み評価の後、バソラティカル側に、マクロファージを培養し、LPSで刺激する。ここにアピカル側から粒子を加え、炎症性サイトカインの生成量を確認し、ナノ粒子の有用性を評価する。
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