2019 Fiscal Year Annual Research Report
ロトクラシー・選挙デモクラシー・エピストクラシー 望ましい意思決定手続きの探究
Project/Area Number |
19J22485
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 晃人 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | ロトクラシー / 代表制民主主義 / 政党 / 道具的価値 / 内在的価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の主な成果は、大きく分けて以下の3つである。 第一に、2018年度に提出した修士論文の一部を改稿して、8月末に『政治思想研究』に投稿した(2020年5月公刊予定)。論文タイトルは「ロトクラシー:籤に基づく代表制民主主義の検討」で、ロトクラシーと呼ばれる、選挙によってではなく一般有権者からの無作為抽出によって立法府の代表者を選ぶ制度構想を既存の選挙民主主義と比較検討した。 第二に、「ロトクラシーの内在的価値」についての研究を行った。内在的価値とは、手続きの結果の価値を含まない、手続きそれ自他の価値である。民主主義の内在的価値とされる「対等者としての処遇」という内在的価値に関して、ロトクラシーは選挙民主主義と同程度である(同程度に内在的価値を持つか、どちらも内在的価値を持たない)ということを、2つのロトクラシー批判を退けることで示した。この成果は、10月末の社会思想史学会で報告し、2月末に『社会と倫理』へ投稿した(現在査読中)。 第三に、「議会政党」についての研究を行った。この成果は、2月に相関社会科学研究会で報告し、3月中旬に『年報政治学』に投稿した(現在査読中)。 その他に、5月に『選挙制を疑う』(ダーヴィッド・ヴァン・レイブルック著、岡﨑晴輝/ディミトリ・ヴァンオーヴェルベーク訳)の書評を「政治理論フォーラム」に寄稿し、11月の相関社会科学研究会で、武漢大学のElena Ziliotti氏の講演の討論者を務めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、選挙民主主義・ロトクラシー・エピストクラシーの3つの制度構想を比較検討することを目的としている。2019年度は、ロトクラシーと選挙民主主義についての研究として、3つのことを行うことができた。それらは、道具的価値に基づく両制度構想の比較、「対等者としての処遇」という内在的価値に基づく両制度構想の比較、そして選挙民主主義の最重要のアクターである議会政党の存在意義の検討である。エピストクラシーに関する研究は2020年度以降に遅らせることになったが、ロトクラシーに関して当初予定していた研究の大部分は終わらせることができたので、研究の進捗はおおむね順調といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度はロトクラシーと選挙民主主義に関する論点を検討した。そこで、2020年度は、2019年度に引き続きロトクラシーに関するいくつかの論点を検討するとともに、エピストクラシーについての研究も徐々に開始する。 具体的には、以下のような研究計画に基づいて、研究を進める。 4-5月には、政治思想学会での報告準備を行い、5月の政治思想学会で「ロトクラシーの正統性」に関する報告を行う(コロナウィルスの影響でweb上で開催)。 6-9月には、日本政治学会および社会思想史学会での報告準備、「プロポーザル・コロキアム」での、博士論文の執筆計画の報告を行う。これらと並行して、ロトクラシー関係の書評論文、「ロトクラシーの正統性」論文を執筆し、可能ならば論文誌に投稿する。更に、11月からの留学準備も進める。 9月には、日本政治学会で「参議院改革論としてのロトクラシー」に関する報告を行い、10月には社会思想史学会で「エピストクラシー:知者の支配の再検討」に関する報告を行う。 11月‐2月には、ロトクラシー研究の第一人者である、米国Rutgers大学のAlex Guerrero准教授のもとで在外研究を行う。 帰国後の3月には、研究会で留学成果の報告を行うとともに、「参議院改革論としてのロトクラシー」論文および「エピストクラシー」論文、そして博士論文の執筆にとりかかる。
|