2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the flexible sex determination in hexaploid persimmon
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19J23361
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
増田 佳苗 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 性決定 / カキ / 倍数化 / エピジェネティクス / 進化 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, カキ属の高次倍数体種における性表現の揺らぎに関わる機構の解明を目指し, 「雌花・雄花両者の着生」や「両性花の派生」に関わる遺伝的・環境的要因を検討した. 花単位の雌雄性にはOGI/MeGIのエピジェネティック制御が関わる報告があるが, 個体内の雌雄着花バイアスを決定する要因は明らかとなっていない. 200以上の品種群および個体内雌雄比に明確なバイアスが生じる交雑系統を用いて, 雌雄バイアスのパターンをモデル化し, 相関性を示す遺伝的因子の特定を行った. 倍数性ゲノムに適応させたGWAS解析法の開拓を行い, OGI/MeGIのエピジェネティック制御にはOGIアレル量が関与しており, OGIのcis制御が雌雄バイアスに関わる重要因子である可能性が示唆された. また, 常染色体上の雌雄バイアス関連遺伝子座にはエピジェネティック制御因子が多く存在していた. さらに, 雌雄花の両者を着花する品種と雌花しか着花しない品種間の発現変動遺伝子を特定し, ジャスモン酸経路を介したエピジェネティック制御が樹内雌雄バイアスに関与する事が示唆された. 六倍体特異的に発現する両性花派生の原因候補因子として, NGA1およびABA・ストレス応答関連因子を特定した. 雄花へのABA処理によって人工的に部分的な両性花を誘導することに成功し, その際にNGA1の発現が上昇することを確認した. タバコにおけるカキ由来NGA1過剰発現体では柱頭の肥大化が見られ, 六倍体栽培ガキにおけるNGA1の特異的発現上昇が両性花派生に関わる鍵遺伝子である可能性が示唆された. また, カキ葉へのNGA1過剰発現のトランジェントアッセイにより, ストレス応答経路に変化はなかったことから, 六倍体ではストレスシグナルに応答してNGA1の発現が上昇し両性花を派生する経路を倍数化の過程で獲得したことが考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「樹内の雌雄バランス決定因子」および「偶発的な両全性の派生因子」ともに, 候補の同定に至った. 樹内雌雄バランス決定因子に関しては, 倍数体用に開発した新規GWAS手法を利用して, OGI/MeGIのエピジェネティック制御を統御する候補遺伝子の選定を行った. 現在は, 特定した遺伝子座上の候補遺伝子群において雌雄バイアスに関わる塩基配列の多型性の特定を目指し, Pacbioシークエンシングにて網羅的に後代の雌雄間における多型の検出を行った. 現在までの有力な機能変異候補として, ヒストンメチレーション制御に関わるATRX1遺伝子において, 雄個体特異的にプロモーター領域へのトランスポゾン挿入およびDNA修復に関わるNon-structural maintenance of chromosomes element遺伝子において1塩基挿入によるフレームシフトの特定に成功しており, 今後はこの変異の機能的証明に着目する. 雄花由来の両性花派生に関しては, ABA/ストレス経路およびNGA1が両性花派生に関わる可能性が示唆された. 現在は, さらに二倍体-六倍体との比較解析を行い, 六倍体特異的な経路として花の対称性を制御するRADIALを鍵因子の候補として特定している. 今後は, 倍数体特異的な制御の解明を目的に, RADIALとNGA1の関係性に着目して機能解析を進めていく予定である. さらに, 倍数体特異的な現象として, サイトカイニンによっても人工的に両性花を誘導可能であることから, サイトカイニン制御系における比較解析も含めて六倍体が特異的に獲得した性表現の可塑化経路の特定を行った. 二倍体-六倍体間で変動する特異的な経路としてサイトカイニン分解酵素および複数のエピジェネティック関連因子が重要な役割を果たす可能性が示唆されている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は, 多様な性表現を制御する技術開発を目標とすると同時に, ゲノム倍化が駆動する性の揺らぎの進化過程を明らかにするものであり, 今後の研究方針の一つとして, 性表現の変化機構を起点として, 倍数化(ゲノム倍化)における新規(エピ)ゲノムワイドな制御変化の可能性も視野に入れて研究を進める. 樹内雌雄バランス決定因子に関しては, 後代の雌雄間で多型を持つ遺伝子群の特定に成功しており, 今後は, 広い遺伝的多様性を有するカキ品種においてもゲノムワイドな多型解析を行い, これらの遺伝子が関わる可能性を検討する. さらに, 特定した候補遺伝子の機能検証のため, カキカルスをOGI/MeGI制御のレポーター系として用い, 候補因子の形質転換に伴うOGI/MeGIにおけるsmall-RNA蓄積およびエピジェネティック状態の変化を調査する予定である, 両性花派生因子に関しては, NGA1に加えて新たに候補遺伝子として特定したRADIALに関してタバコへの形質転換体を作出し, 機能調査を行う. また, 二倍体-六倍体間で変動する特異的な経路としてサイトカイニン分解酵素およびエピジェネティック関連因子を特定しており, 今後はメチロームデータ/ヒストンメチレーションデータの比較により, 倍化進化の過程で六倍体が獲得した新たな性変化経路を特定し, 両性花派生という揺らぎの成立過程の解明を目指す.
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Research Products
(6 results)