2020 Fiscal Year Annual Research Report
重合酵素が示す特異な触媒能を利用した構造制御型バイオポリエステル生産法の開発
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19J40108
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
百武(石井) 真奈美 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-10-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリヒドロキシアルカン酸 / 重合酵素 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオポリエステルであるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、バイオマスを原料に微生物細胞内で合成され、蓄積される。その重合過程を担う重合酵素は、由来する微生物によって基質認識などの特性が異なり、中でもBacillus cereus由来の重合酵素PhaRCは、PHAの加アルコール分解活性を有する珍しい酵素である。本研究では、この活性に関与するアミノ酸部位の特定を目的としている。昨年度は、HPLC分析を用いて、PHA分子量に基づいたスクリーニング系を構築し、合成するPHAの分子量が野生型PhaRCとは大きく異なる変異型PhaRCを複数取得することに成功した。本年度は、本実験系を用いてスクリーニングを継続し、追加で複数の改変型酵素を取得した。シーケンス解析の結果、得られた改変体の多くは複数のアミノ酸変異を有していたため、PHA分子量変化に関わるアミノ酸を特定するべく、各変異を単独で有する改変体を構築し評価することで分子量に関与するアミノ酸変異を特定した。さらに、加アルコール分解活性が変化していることを確認するため二段培養を実施し、野生型に比べ分解活性が抑制された改変体を絞り込んだ。これらの改変体が有する変異は、PhaRCの加アルコール分解活性発現を抑制する変異であると考えられる。PhaRCはPHA重合酵素の中でもPHA合成能が高く、PHAの物性を向上させる第二モノマー成分の重合能も有している。分解活性の抑制はPHAの高分子量化につながり、PhaRCの有用性を一層高めることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新型コロナウイルスの影響により出校制限があり、例年よりも実験を実施可能な日数・時間が制限されていた。しかしながら、加アルコール分解活性発現に関わるアミノ酸部位を具体的に絞り込むことができた。特に一部の変異においては、分解活性が大きく抑制されていることが分かり、不明な部分の多い本反応について新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた改変体において加アルコール分解活性が抑制されたメカニズムについて、解明を試みる予定である。また、これまでに構築した、アルコール分解活性が抑制された改変型PhaRCを用いたPHA生産を確認し、有用性を評価する。 これまでに取得した改変体はいずれもPHAが高分子量化するものであり、PHA分子量がより一層低下した、すなわち加アルコール分解能が高まった変異体は取得できていない。こちらの実験系の構築にはまだ着手できていないため、今後実施する予定である。
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