2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K00092
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
斎藤 英喜 佛教大学, 歴史学部, 教授 (40269692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 奈津子 佛教大学, 総合研究所, 特別研究員 (50772555)
八木 透 佛教大学, 歴史学部, 教授 (70200475)
星 優也 池坊短期大学, その他部局等, 講師 (50850583)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神楽 / 祭文 / 中世神道 / 民俗信仰 / 民俗芸能 / 民間宗教者 / 近代神道 |
Outline of Annual Research Achievements |
神楽の中世的展開とその変容をテーマに、これまでの「民俗芸能」研究とは異なる視野からの神楽研究を進めてきた。本年度は三回程度の研究会を計画したが、コロナ禍のために、11月8日に、オンラインによる研究会が開催できたのみである。 その内容は、◇井上隆弘氏「八人の八乙女と五人の神楽男―中世神楽の造像―」◇松尾恒一氏「神楽はどのようにして男性宗教者による仮面の祈祷・芸能になったか―古代仏教儀礼の中世的展開としての神楽の可能性を考える―」◇松山由布子氏「説話・伝承研究における祭文―その文芸性と地域性」となる。井上氏の発表からは、「中世神楽」なるものを特質を明らかにするためには、古代宮廷御神楽や春日社や石清水を舞台とした古代神楽と、何が違っていくのかということを明確にしていくことが課題であること、松尾氏の発表からは、中国・韓国などの「東アジア」における宗教芸能との関係などへの視点が必要となるという問題提起を受けたが、アジア地域の歴史性をきちんと押さえたうえで「比較」することの難しさが議論された。また松山氏の発表からは、「祭文」は、中世神楽の特質を考えるうえで、欠かせない課題なので、それをどのように読み、分析するのかということをめぐる研究史の検証が必要であることが議論された。 研究代表の斎藤英喜は、折口信夫の「陰陽道」研究を再考する論考を執筆し、その過程で、高知県における明治・大正期の在地神主の資料を解読し、近代の神職が「中世的」な要素を伝える「松神楽」を伝えていることが判明した。 計画していたフィールドワークについては、開催地がすべて中止となったので、残念ながら、今年度は行えなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、フィールドワークを計画していた地域の神楽が、すべて中止となったために、まったく行うことができなかった。また高知県歴史民俗資料館での資料調査も、調査旅行が不可能なために行うことができなかった。 一方、研究会については、かろうじてオンラインで一度、開催することができた。上記の研究実績に示したように、「神楽の中世的展開」をめぐって、古代神楽、アジア諸地域の民俗芸能との比較、また神楽の場で読まれる祭文の研究方法についての議論を深めることができた。今後は、オンラインを活用して、分担者、協力者の最新の研究業績、論文を対象とした「合評会」や「勉強会」の開催を計画している。 研究実績とも関わるが、研究代表の斎藤英喜の年度内の発表論文によって、「神楽の中世的展開とその変容」のうちの「変容」の問題として、高知県の明治・大正期における神職の歴史的実態、彼らが執行した「中世的な神楽」の資料分析などを果たすことができたが、これについても、さらに資料所持者にたいする聞き取り調査などが必要とされるのだが、上記の理由で、まだ出来ていないのが現状である。また高知県における神楽実修の実態との比較なども今後の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールドワークについては、コロナの終息を待つしかない状態である。とくに「死霊祭祀」とかかわる青森県の「墓獅子」の調査、また高知県の資料調査が必要となるのだが、いまのところ、その見通しが立たない状態である。 研究会については、オンラインによる開催を七月ごろに予定している。ここでは最近発表された研究協力者の論文を中心にとりあげ、とくに「浄土神楽」論の研究史的検討、古代末期から中世にかけての寺院系神楽の動向、中世神道言説と神楽との影響関係などを検討し、「神楽の中世的展開とその変容」にかんする研究の推進を果たしたい。 また研究代表の斎藤は、近代における「古神道」系の言説を追究していくことで、明治期、大正期の在地神職が、どのように地域の神楽を「復興」「変容」させていくかを検証していく作業を続ける。ただしこれも資料調査が進められないので、現在は、刊行されている資料集などを活用して研究を推進させる計画である。
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Causes of Carryover |
コロナのために、フィールドワークが行えず、旅費が使用できなかったため。
予定していた神楽の開催が始まったところから、調査を再開していきたい。
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Research Products
(11 results)