2019 Fiscal Year Research-status Report
中国古代道家思想の生成論と儒家の倫理学説に関する研究
Project/Area Number |
19K00098
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
西 信康 三重大学, 人文学部, 特任准教授(教育担当) (30571062)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 中国哲学 / 中国思想 / 生成論 / 倫理学 / 解釈学 / 出土文字資料 / 儒家思想 / 道家思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に『荀子』の性悪説に関する研究を進めた。先ず本研究は、予備的考察の結果、従来の研究成果を次のように集約した。(一)性悪説の論理的矛盾を認めることで、性悪説の局所的な論理的整合性ではなく、人間の本性に対する荀子の基本思想の解明が目指されたこと。その結果、『荀子』における人間の本性とは、善悪いずれへの発展の可能性を有する「中立的」「中性的」なものとする解釈が得られた。二つめは、(二)性悪説の矛盾を根拠として、荀子の思想的形成過程の解明が目指されたこと。その結果、荀子の思想形成の過程が探求されたこと。以上を踏まえ、本研究は次の問題点を指摘した。①思想の形成過程や文献の編纂過程の解明を目的とし、テキストに認められる内容上の矛盾に着目することは、学術的に正当な問題設定でありかつ妥当な方法論である。一方で、そうした研究は、「矛盾」の根本的な解決には繋がらず、むしろ矛盾の固定化を促進し、その根本原因の究明を先送りにすることに繋がる。②このことは、荀子の想定する人間の本性を「中立的」「中性的」とする説明についても同様に指摘できる。たといその説明が『荀子』の思想体系との関連において妥当と判定されたとしても、飜って「人の性は悪なり」という記載に立ち返るとき、それを人間の本性が中性的であることを意味する、と説明して納得することは困難であることに変わりはない。以上を踏まえ、本研究では、性悪説に関する先行研究に対し、「矛盾を認める我々の判断の妥当性を問い直す」ことを提案した。そうして、新出土資料をも考証対象としながら、矛盾、本性(性)、善悪等の意味を反省し、性悪説に関する新たな解釈と、その思想的意義に関する新たな見解を提示した。その成果は、「矛盾と合理 ─『荀子』性悪説の解釈学的批判」として、学術雑誌『中国─社会と文化』(第34号、p.102-p.120、2019年7月)に公開された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備的考察の蓄積が功を奏し、『荀子』に関する研究成果を当初の想定よりも早く公開できたため。必要な資料の収集が順調に進んだため。
|
Strategy for Future Research Activity |
儒家の倫理学説に関する研究を進化させるとともに、道家の生成論に関する研究に着手する。その過程で、新出土文字資料をも研究対象とする。
|
Research Products
(3 results)