2021 Fiscal Year Research-status Report
中国古代道家思想の生成論と儒家の倫理学説に関する研究
Project/Area Number |
19K00098
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
西 信康 三重大学, 人文学部, 特任准教授(教育担当) (30571062)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 鬼神 / 信仰 / 懐疑 / 中国 / 儒家 / 墨家 |
Outline of Annual Research Achievements |
儒家の倫理学説に関する研究を進めた。その一環として、儒家の思想形成に多大な影響を与えた墨家の思想動向について調査した。特に注目したのは、運命や宿命に関する思想である。調査の結果、墨家において運命論や宿命論が思想的主題となったのは、それらが倫理的行為の意義や、倫理の実践主体となることの効用について、これを疑わせる契機になることが懸念されたため、との理解を得た。本研究は、この理解にもとづき、『墨子』以外の諸文献にまで調査対象を広げ、運命論および宿命論と、倫理学説との関係を検証した。その結果、新出土資料である上海博物館蔵戦国楚竹書『鬼神之明』を重要文献と見なし、その表現形式や思想内容に関する分析を進めた。先行研究によれば、当文献は、鬼神に対する懐疑を表明していることに、その思想的特徴が認められる。これに対し、本研究では、以下のような知見を得た。①懐疑を表明することは表現技法の一つとして、思想的主題とはこれを分けて捉える視点が必要であること。②懐疑の表明は直ちに信仰の放棄や思想の否定と同一視されるべきではなく、類似表現が認められる他文献の事例からしても、かかる前提理解は再検討の余地があること。③懐疑を直視して表明し、これをみずから再解釈することは、信仰の実践過程の一部であり、思想の洗練化に対しても不可欠の契機と位置づけられていた可能性が想定されるべきこと。 以上の研究成果は、「懐疑と信仰─上海博物館蔵戦楚竹書『鬼神之明』に関する考察─」と題し、日本中国学会第73回大会にて口頭発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの蔓延により、研究活動が滞ったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
残りの期間と研究計画とに照らして、研究重点を選定する。
|
Causes of Carryover |
県外移動の自粛要請に応じ、調査旅費の消化が大幅に遅れたため。また、これに伴い、新たな研究資材の購入の必要および機会が減じたため。本年度は、改めて主に学会参加および資料調査旅費として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)