2022 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳における概念形成と主体変容:20世紀ドイツ・フランスの思弁的翻訳論
Project/Area Number |
19K00120
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西山 達也 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40599916)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 翻訳の思想 / レヴィナス / レーヴィット / メタファー / 広義の翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は20世紀のフランスおよびドイツを中心に発現した《翻訳をめぐる思想》の内実を明らかにすることを目的とする。この目的に達するために、以下の点を解明する。(1)《翻訳をめぐる思想》が多様な学問領域を越境しながら、いかにして新たな概念の創出と学知の編制に関与したのか、そして、概念と学知の変革可能性をどのように理論的に思考したのか。(2)この思想潮流が、主体の単独性と複数性、そして主体そのものの生成と変容をどのように思考したのか。これらの問いかけに基づき、《翻訳をめぐる思想》が狭義の翻訳(言語と言語のあいだでなされる翻訳)にとどまらず、広義の「翻訳」概念をいかにして形成したのか、そしてそれが「メタファー」概念――修辞的文彩の一種であると同時に言語の内的運動・動態そのものとしての「メタファー」――の再検討へと接続したかを検討した。具体的には、エマニュエル・レヴィナスの1950年代後半から1960年代前半にかけての講演原稿および準備草稿を読解し(OEuvres, tome 1, 2)、そのなかでカール・レーヴィットの1958年の論考「人間の媒介者としての言語」がいかに批判・吟味され、そこから「絶対的メタファー」とよばれる独自の概念が構想されているかを精査した。その結果、レヴィナスおよびレーヴィットが前提とする言語哲学的な地平と、相互の差異、とりわけ超越/内在をめぐる思考の差異が浮かび上がった。この研究はいまだ萌芽段階のものにとどまったたが、本研究の一環として、スタート地点での見通しを西日本哲学会シンポジウム「メタファーをめぐる思考――生・超越・言語」の提題「絶対的メタファー」(2022年12月11日、於 鹿児島大学)にて報告した。
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