2020 Fiscal Year Research-status Report
Wyndham Lewis's Thoughts on Media: On the Interface Between Art and Ideology
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19K00137
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
要 真理子 跡見学園女子大学, 文学部, 教授 (40420426)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 茂 京都精華大学, 人文学部, 教授 (80368042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウィンダム・ルイス / モダニズム / タイポグラフィ / メディア論 / ナショナリズム / 地政学 / 様式論 / グローバリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1910年代半ばに英国の前衛芸術運動Vorticismを先導した人物であるウィンダム・ルイスの、これまで掘り下げられることのなかった1920年代以降の業績にまで視野を広げ、彼が予見したメディアの地景図をグローバリズムの一潮流として美学・感性論の観点から浮き彫りにすることを目指した。しかしながら、2020年度は開始直前にCOVID-19拡大のため国内外の移動に支障を来すこととなり、資料収集、研究協力者とのミーティング等の実施、計画していたルイス関連の研究会の立ち上げが困難となった。このため研究経費も次年度に大きく繰り越さざるを得なくなった。 この状況下において、研究代表者はDNP文化振興財団の紀要第3号に、本課題の前身となるプロジェクト「20世紀初頭の英国前衛美術と印刷メディアの発展」の報告を寄稿した。そのなかで、Vorticism期のルイスの思想が機関紙『Blast』のデザインや、その後の彼の出版物にも通底して現れていることを確認した。この特徴は、前年度に口頭および書籍を通じて発表した2篇の拙稿や研究分担者による翻訳とその解題にも明示されている。 また研究分担者の前田茂は昨年度までの作業を続行して、所属研究機関の紀要に「ウィンダム・ルイス『Anglosaxony: A League that Works』翻訳(3)」を解題とともに発表した。そこにおいて、前述の考察で明らかとなった1910年代から20年代にかけてルイスの思想に大きな影響を与えたT.E.ヒュームによるW.ヴォリンガーの様式論が、1941年に発表された上記の小冊子にも、新たに地政学の考え方と融合された形で存続していることを確認した。 この間、研究協力者のポール・エドワーズ氏と田中正之氏に上記の研究成果の報告を行ない、その後の研究の方向性について貴重な示唆をいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れている主たる理由は以下のとおりである。 2020年度において、新型コロナウイルス、およびその変異株の感染症拡大の対策として発令された2度の緊急事態宣言や所属機関をはじめとする国内外の移動の規制・禁止のために、実地調査の範囲が大幅に狭められたことが挙げられる。さらに、対面での交流に制限が課せられたことにより、研究や教育の場での新しいシステムへの順応に想定以上の時間を要することとなり、これらと並行して当該課題を進行することが難しかった。以上により、本課題の大幅な計画の修正が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降、昨年度の遅れを取り戻すべく、また、新型コロナウィルス変異株の感染状況なども視野に入れ、計画を立て直すこととする。具体的には、この4月より9月までの半年間、研究分担者の前田茂が代表者の所属機関である跡見学園女子大学に客員研究員として滞在し、代表者と協力して大学図書館に所蔵されている関連資料の調査と翻訳を行う。当大学には英文学者の兼武進が在任していたこともあり、T.E.ヒュームをはじめ、モダニズム文学・芸術の資料が多く所蔵されている。研究課題申請時に予定していた海外調査や訪問が困難であるなか、幸いにも、20世紀初頭の雑誌や冊子をとおして日本におけるルイス研究や受容を整理できる環境が整っている。2021年度の前半、文献資料の確認に時間をかけ、並行してルイスの著作の解釈や翻訳を手掛けていく。このように、研究の遅延と計画の変更に伴い、本課題の研究期間を令和4年度まで1年間延長することを検討している。今年度の具体的な計画は以下のとおり。 ・月一回、研究協力者の一人、ウィンダム・ルイス記念財団の評議員長ポール・エドワーズが運営の中心であるルイスオンライン研究会に参加する。 ・当初の計画通り、国内においてもオンライン研究会を立ち上げる。研究会に先駆けて、代表者と分担者は、研究協力者の田中正之を含めて今後の進行に関して打ち合わせを行う。 ・ルイスを含め、Vorticism(ならびに英国前衛芸術運動)の日本での受容を1910年代~1940年代発行の雑誌を閲覧しつつ調査するとともに、存命の日本の先行研究者への聞き取り調査を行う。 ・研究代表者は、8月にオンラインの国際会議ACDHT2021で口頭発表(確定)を行う一方で、研究協力者は、ルイスの『Time and Western Man』と「Anglosaxony」から読み取れる彼の思想変遷に関する研究論文を執筆し、所属学会での発表を目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度において、新型コロナウイルス、およびその変異株の感染症拡大の対策として発令された2度の緊急事態宣言や所属機関等で要請された国内外の移動の規制・禁止のために、研究代表者、研究分担者ともに、当初計画していた旅費を使用しなかったこと、研究会、国際会議の実現がかなわなかったため、それに関わる人件費・謝金を使用しなかったことが挙げられる。本課題は、1年延長を視野に入れており、2021年度は国内で可能な先行研究、関連文献の現物およびそれらの複写による入手、オンラインでの国際会議を視野に入れた環境整備、出版、これに先駆けて行う研究会のために当該基金を充当する。
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Research Products
(6 results)