2019 Fiscal Year Research-status Report
Cecile Chaminade:Piano works
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19K00216
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
坂井 千春 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (40381925)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 女流作曲家 / ピアノ曲 / ベル・エポック / フランス音楽 / シャミナード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ベル・エポックに活躍したフランス人セシル・シャミナード(1857-1944)のピアノ曲を中心に、ピアノ教育者としての視点から演奏法の考察を行い、再評価を試みることが目的です。従って研究論文の形態よりも、実践的な演奏会などを通じてシャミナードの音楽を世の中に流布する手法を取っています。 1年目は「ベル・エポックの調べ」と題して、彼女と同時代に活躍した男性フランス人の作曲家もプログラムに並べ、室内楽作品で比較を試る演奏会を開催予定でした。一流音楽家たちに共演を依頼し、4月1日の京都府民ホールアルティでのコンサートに快くご協力頂くことになりました。コンサート日程が遅くなってしまったのは、科研を取得してから共演者のスケジュール日程を調整したところ、7人全員多忙で、この日しか可能日がなかったためです。プログラムは以下の通りです。 フォーレ:エレジーハ短調 作品24(Vc.&Pf.)、ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女(ハルトマン編曲、Vn.&Pf.))、ラヴェル:ハバネラ形式の小品(Vn.&Pf.)、シャミナード:ピアノ・トリオ第2番ニ短調、作品34 (Vn.Vc.Pf.)、ショーソン:ピアノとヴァイオリンと弦楽四重奏のためのコンセール ニ長調、作品21(Pf,Solo Vn. !st Vn. 2nd Vn. Vla. Vc.) 共演者はソロ・ヴァイオリン:ドンスク・カン氏(元東京芸大招聘教授)、第1ヴァイオリン:玉井菜採氏(東京芸大ヴァイオリン科教授、現副学部長)、第2ヴァイオリン:上敷領愛子氏、ヴィオラ:山本由美子氏(京都芸大非常勤講師)、チェロ:向山佳絵子氏(京都芸大教授) シャミナードのピアノ・トリオ第2番は彼女の代表作のひとつで、ほぼ同時期に作曲されたショーソンのコンセールと手法的に類似している点、相違点が面白く、当日のプログラムノートにまとめる予定でした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず4月1日京都府民ホールアルティで開催予定だったシャミナードを中心とした室内楽コンサートが、新型コロナウィルスの拡散防止のために、3月6日の時点で中止せざるを得なくなりました。共演予定だったヴァイオリニストのカン氏もソウルからの入国拒否状態になり、コロナの終息も先が見えない中、延期もできませんでした。それで、シャミナードのトリオのみ、玉井氏と向山氏とともに、当日無観客でのホール録音を試みましたが、東京都知事の首都封鎖発言を受けて共演者の移動のリスクなども考え、こちらも残念ながら中止しなければならなくなりました。 しかし、コンサートチラシ8000枚を関西各地の音楽関係者に配布し、科研の研究発表であることを説明した招待状も送付した後でしたので、様々な方から、激励のお手紙を頂き、シャミナード研究を周知するという意味においては、ある程度成果があったと自負しております。まだ緊急非常事態宣言下の東京では先が見えませんが、コロナが落ち着いた後、共演者のスケジュールと合わせて別の日程で演奏会を開催したいと思います。また、この間にシャミナードの別の作品もレパートリーに加え、ピアノソロ作品のyoutube 録音を計画しています。 演奏会のほうはコロナのために頓挫しましたが、もう一つの計画であった楽譜出版の方は、2019年12月に全音出版社からシャミナードピアノ曲集を2巻にまとめて出版することに同意を得ております。研究者自身が運指法、ペダル、細かい演奏法の注意書きを記し、校訂は林川崇氏、概説を上田泰史氏が担当することになっています。
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Strategy for Future Research Activity |
シャミナードの楽譜出版については、全音出版社の経営上の方針から、とりあえず2巻にまとめて出版する予定です。シャミナードのピアノ作品の初期から晩年までの代表作と日本での未出版作品を織り交ぜ、音楽的背景の解説と実践的な演奏法を加えて、今までにない画期的なシャミナードピアノ作品集を目指しています。出版社との最終打ち合わせも、コロナのために今は頓挫していますが、2020年12月頃の出版予定です。予定出版曲目は以下の通りです。 第1巻:言葉のないロマンスop.76、スカーフの踊りop.37-3、森の精op.60、スケルツォ・ヴァルスop.148、糸紡ぎop.35-3、ノクターンop.165、3つの古風な舞曲op.95、傷ついた小さな兵士の物語op.156 第2巻:ソナタop.21、媚びる女op.50、モレナop.67、華麗なるワルツ第3番op.109、秋op.35-2、変奏曲op.89、ガヴォット第5番op.162、荒廃した祖国でop.155 そのほか2年目(2020年-2021年)の研究活動計画としては、パリに行き、シャミナードに関する資料を収集する予定です。フランスのコロナ状況次第でこちらも中止になるかもしれませんが、2020年8月にはフランスの講習会MusicAlpに講師としても招聘されています。 3年目(2021年ー2022年)は、9月に東京文化会館小ホールでオール・シャミナード・プログラムで演奏会を開催予定です。会場予約は公演日の15か月前で、6月に応募予定です。その演奏会にシャミナードのピアノ協奏曲を日本初演、弦楽四重奏の伴奏で演奏する計画で、私自身で編曲を行っている最中です。
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Causes of Carryover |
1年目に開催予定だった演奏会のための支出が、共演者への謝金、交通費などで予定額を超えそうだったので、前倒し請求をしました。しかし、新型コロナウィルス感染拡大防止のためにコンサートを中止せざるを得ず、1年目にかかった経費がチラシ製作費とリハーサル謝金のみになりました。(京都府民ホールの会場費は今年度分に計上してありますが、4月末日、コロナのためという理由で返金されましたので、次年度収入に入ります。) 残金は次年度に繰り越し、資料収集のためのパリへの渡航費、出版費用、延期したコンサートへの資金に使用する予定です。
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