2020 Fiscal Year Research-status Report
Cecile Chaminade:Piano works
Project/Area Number |
19K00216
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
坂井 千春 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (40381925)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 女流作曲家 / ピアノ曲 / ベル・エポック / フランス音楽 / シャミナード |
Outline of Annual Research Achievements |
シャミナードのピアノ曲集全2巻が全音出版社から2021年9月に出版される予定で、現在、執筆中です。 日本に流布している楽譜の多くは、19世紀にアメリカで出版された際に校訂者がアーティキュレーションを変更しているものを使っていますが、本出版ではパリ国立図書館に残っているシャミナードの初版譜に基づいて校訂しています。シャミナードはテンポ表示、ペダルは書き込みましたが、運指は殆ど書いていません。彼女の曲はアマチュアが弾くことも多いので、19世紀フランスロマン派を弾くうえで最上と思われる運指を提案しました。また、ペダル記号も、シャミナードの自演録音のペダルが楽譜と違うことも多いので、初版譜のペダルと並列して書き入れます。そのほか演奏者への助言として、楽曲構成、細かな演奏法への注意書きを加えます。校訂は林川崇氏、シャミナードの生涯についての解説は上田泰史氏に担当して頂いています。シャミナードのピアノ曲全曲は膨大過ぎるために出版社の判断で実現できませんでしたが、今回は今までパリ以外で出版されていなかった佳作も多数あり、シャミナードの作品の流布に貢献できると自負しています。しかも、従来の彼女のイメージである詩的タイトルの作品のみでなく、古典的スタイルのもの、ソナタ、晩年の作品など多岐にわたっています。出版予定曲目:ピアノ・ソナタop.21、練習曲op.35より秋、糸を紡む女、スカーフの踊りop.37バレエ版(従来の出版は短縮版)、ピエレットop.41、魅惑の女op.50、森の精op.60、モレナop.67、言葉の無い6つのロマンスop.76、華麗なるワルツ第3番op.80、主題と変奏op.89、3つの古風な舞曲op.95、スケルツォ・ヴァルスop.148、荒れ果てた祖国にてop.155、傷ついた小さな兵士の子守歌op.156、ガヴォット第5番op.162、ノクテュルヌop.165、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年9月に全音楽譜出版社から出版予定のシャミナードピアノ曲集の執筆も順調に進んでいます。 パリ国立図書館所蔵の初版譜もインターネットで入手できました。ただ、コロナで海外渡航ができないために、数冊の国立図書館に無い楽譜、自筆譜の収集ができないのが残念です。校訂はほぼ終わり、今は運指を様々な人々の手で試しているところです。これが終わり次第、解説に入ります。 また、2021年10月25日には、東京文化会館小ホールで、オール・シャミナード・プログラムのコンサートを行います。ピアノ・ソロだけでなく、室内楽作品も含めて録音し、できればCD制作の予定です。その時演奏予定のピアノ小協奏曲(コンチェルト・シュトゥックop.40)は、現在、林川崇氏に弦楽五重奏版への編曲を委嘱中です。
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Strategy for Future Research Activity |
楽譜出版や演奏会が一段落したら、シャミナード・クラブというホームページを立ち上げ、シャミナードの生涯や作品を一般の人々にもわかりやすく紹介する予定です。 また、私が勤務する東京芸術大学、2021年度後期の「大学院器楽特殊研究」で「19世紀後半から20世紀前半の女流作曲家」についての講義を行う予定です。 その中で、セシル・シャミナード以外にも、クララ・シューマン、ファニー・メンデルスゾーン、エミー・ビーチ、ジェルメ―ヌ・タイユフェール、リリ・ブーランジェなどの作曲家を取り上げます。作品の分析だけでなく、それぞれの時代と境遇の中で、女性作曲家がどのように道を切り開いて行ったかを考察します。現代の女性音楽家たちにもつながる悩みや共感する点にスポットを当てていくことが、若い女性音楽家の励みや指針にもなり、また逆に若い男性音楽家たちには性別を超えて、素直に音楽のみに感動してほしく、できるだけ多く紹介していく予定です。
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Causes of Carryover |
昨年は、コロナのために予定していた演奏会を中止せざるを得なくなり、必要経費がチラシ作成費とリハーサル謝礼分のみになりました。また資料収集のための渡仏もできなくなり、海外渡航費が浮いたことも理由の一つです。 2021年度は、コロナで演奏会ができなくなった場合も、無観客で録音予定です。(2020年度は、まだ様子がわからず厳しいもので、無観客録音もできませんでした。)楽譜出版、演奏会と録音にかかる費用にあてたいと思います。
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