2021 Fiscal Year Research-status Report
Cecile Chaminade:Piano works
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19K00216
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
坂井 千春 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (40381925)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 女性作曲家 / ピアノ曲 / ベル・エポック / フランス音楽 / シャミナード |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年10月25日に東京文化会館小ホールにて、オール・シャミナードのプログラムでの演奏会を開催しました。全てシャミナードの作品によるプログラムの演奏会というものは世界的にも珍しく、おそらく日本では初めての試みだったと思います。 プログラムは、シャミナードのピアノ・ソロ作品のみならず、フルートやヴァイオリン、ピアノ・トリオを含む室内楽作品、またピアノ協奏曲を室内楽伴奏に編曲委嘱して演奏するという、非常に意欲的なものでした。セシル・シャミナードという女性作曲家が、単にサロン用の小品、ブルジョアの手慰み的な作曲家ではなく、大きなスケールを持つ実力派として活躍していた事をを伝える画期的な試みであったと自負しています。 曲目は、最も有名なフルートのコンチェルティーノop.107、代表作のひとつであるピアノ・トリオ第2番イ短調op.34、ヴァイオリン用にクライスラーが編曲したスペイン風セレナーデop.150、林川崇氏の室内楽編曲によるピアノ小協奏曲op.40、親しみやすいピアノ小品6曲(森の精op.60、魅惑の女op.50、ピエレットop.41、秋op.35-2、傷ついた小さな兵士の子守歌op.156、華麗なるワルツ第3番op.80)でした。 演奏するソリストにはピアノの坂井(研究者)の他、第一線で活躍する女流演奏家たち、フルートの高木綾子氏、ヴァイオリンの玉井菜採氏、チェロの向山佳絵子氏を迎え、ピアノ小協奏曲の室内オーケストラパートには東京藝術大学の優秀な音楽学生に協力してもらいました。また上田泰史氏にお話をして頂き、少しでも親しみを持ってもらうように工夫も凝らしました。 コロナ感染者が減った時期ではありましたが、万全の感染対策をとって沢山のお客様にご来場頂き、「現代の喧騒を忘れ、ベル・エポックにタイムスリップしたようだった」「心から楽しみ、感動した」など多くの反響を頂きました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年10月のオール・シャミナードのコンサートの生演奏をCD化することをコジマ録音にお願いし、現在作成進行中です。ピアノソロ曲のみ、2022年3月9日に録り直し、2022年7月には完成の予定です。 全音出版社から発売予定のシャミナードのピアノ作品集(2巻、17曲)のペダル、運指校訂も最終校訂に向かっています。今後、曲目解説部分を英訳し、海外での発売も予定されています。 初版以降、シャミナードの作品はほぼフランスのエノック社が独占し、短い1曲ずつの楽譜が高価でした。版権が切れた後も、アマチュア向け小品選集のようなものが多く、今回のような規模で多角的にシャミナードのソロ作品をまとめた楽譜は、今のところ世界でも初めてです。
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Strategy for Future Research Activity |
完成した楽譜とCDを持って、シャミナードの作品を世の中の人に多く知ってもらうために、各地に講演会に赴く予定です。シャミナード・クラブの活動も本格化させ、ホームページなども立ち上げる予定です。 今年8月には、フランスのティーニュの夏期講習会に講師として招かれているので、パリで更なる資料収集も行います。コロナで2年間渡仏できなかったため少し遅れていますが、自筆譜の収集、写真撮影などを行い、シャミナードの生涯を物語化した英語版「スカーフ・ダンス」を邦訳し、出版したいと思っています。 また、シャミナードのピアノ曲の校訂中、初版と比較すると後世の男性校訂者による書き換えがかなり頻繁に行われていることを発見し、それが元来の女性らしい細やかなニュアンスを損なっていると感じました。男性目線による同じような書き換えが、他の女性作曲家にも行われているかどうか、同世代の女性作曲家にも行われているかどうか研究を拡げていくつもりです。2023年にはアメリカのボストンにあるシャミナード・クラブを訪問し、世界の女性作曲家、研究者と交流を深めたいと思っています。
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Causes of Carryover |
CD録音が、会場の空き状況の関係で2022年3月までかかったため、録音編集、作成が次年度まで持ち越しました。
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Research Products
(1 results)